十万hit感謝
とまと様:真冬の朝、寒さに弱かったり朝に弱かったりでぐずぐず布団からでない臨也と朝に強い静雄が布団のなかでもちゃもちゃ揉める話(R15、臨静)
 朝陽が射し込む静雄の部屋で、携帯のアラームが鳴り出した。
 直後、臨也の瞼が開く。
 頭まで潜った布団を持ち上げ──もう一度被る。
 自分を上に乗せてすやすや眠る静雄の裸の胸を、つんつんとつついた。
 素足を、彼のパジャマに包まれた腿に絡ませる。
 最大音量で喚く携帯にも気付かず熟睡する彼の心臓に耳を押し付ける。すりすりと顔を擦りつけた。
 ──あったかい。しかし、うるさい。
「──シズちゃん…」
 今日は特に予定はないけれど。昨夜確認した目下熱いネタに変化がないか、そろそろ見ておきたい。
 ぴたり、とアラームが止まる。
 太陽が、静雄の顔を柔らかく包んでいた。
 臨也はもそもそと這い上がって頭を出し、すぐに引っ込んだ。
 布団を引き上げ、静雄の頭まで温もりにくるまった。
 唇を押し付け、普段より渇いた口内を濡らしていく。
「…ん…」
 ゆっくり持ち上がった掌に腰を抱かれた。
「シズちゃん、起きて」
 髪をかきまわし、耳元を擽る。
 ぼんやりした瞳が臨也を見上げた。
「──何時、だ?」
「7時過ぎだよ」
 薄暗い中、静雄の瞳に微笑みかける。
 彼は二、三度ゆっくり瞬いて、
「──おやすみ」
臨也の頭をその肩口に抱き寄せた。
「待ってよ、シズちゃん。寝てもいいから、ちょっと起きて」
「んだよ──今日は10時まで寝るっつったろ」
 確かに聞いた。構わないよと答えた記憶もある。
「寝る前に携帯とって、それだけ。いいでしょ?」
「ケータイ?」
「うん、あれ」
 布団からはみださないように、コンセントと充電器で繋がった黒い携帯電話を示す。
「──自分で取れよ」
「やだ、寒い」
 不機嫌に睨む彼にすりより、お願い、と囁くと静雄は渋々身を起こした。
「待って、だめ、めくっちゃっ!!」
「うるせぇな…」
 乱暴に押し退けられ、静雄の体が僅か上にずりあがる。
 ころん、と寝返りひとつで無防備な背が向けられた。
 つい、手が出た。腰からすうっと逆撫でする。
「うわっ?」
 びくりと体が跳ね、とすっ、と軽い音がした。
「精密機器を落とさないでよ…壊れたら、困るんだから」
「なら触んじゃねぇ…」
 ぶつぶつと掌を払われ、畳に落ちた携帯電話を投げ込まれる。
 もう一度寝床に戻った静雄の、少し冷えた腕に抱き寄せられた。
 心地いい鼓動を耳元に感じ、臨也は頭から布団に潜ったまま仕事を開始する。
 呼気で曇る画面をパジャマで拭い、新しい情報に胸を高鳴らせ──静雄が舌打ちして起き上がった。
「わぁ、めくらないでっ!」
「眠れなくなっちまったじゃねぇか──」
「起きるの?」
 緩く睨まれ、布団をかけられた。
 子供を寝かしつけるように上からぽんぽんと撫でられる。
「朝飯作ってくる。食うだろ?」
「えっと…」
 返事に詰まる臨也を待たずに足音が離れていく。
「シズちゃんの作ったものなら食べたいけど──」
 水音が聞こえてきた。
 彼のいない夜具は、先程よりも冷ややかだ。


 一仕事終える頃には、甘ったるい匂いがこちらまで漂ってきていた。間もなく、台所の物音が止まる。
「臨也、朝飯」
 ぶっきらぼうな言葉に身を起こし──沈んだ。
「──あと5分」
「さめるじゃねぇか」
 布団を奪われそうになって全力で抵抗する──が、敵う訳もなくひっくり返され、寝具の上に転がる。
 きんきんに冷えた空気が素足に絡んで、ぞわぁっと鳥肌がたった。
「ヒーター──は、なかったね…今度買わなきゃ…」
 ぐい、と腕を掴まれた。
「いらねぇよ、使わねぇから」「俺が使うの」
 彼の手を払ってもう一度、温もりの中へ。
「じゃあ俺、今日はここで食べる」
「嫌だ、汚れるだろ」
「えっちするより汚れないよ」
 ぴた、と静雄が固まった。
 そおっと覗くと、真っ赤だ。
 ──可愛い。いつまで経っても、変に初で。
「──虫が涌くだろ」
「この寒いのに? 大丈夫だよ。俺、零さないし」
 腕を伸ばして、項を抱き寄せる。
 素直に被さってきた耳元へ甘く囁いた。
「ね、いいでしょ…」


 枕元に、さぞかし虫も好みそうな朝食が並べられた。
「絶対零すなよ」
「──気をつけるよ」
 臨也はプリントーストの皿を引き寄せ、肩まで布団にくるまる。
 魅力的な素肌をTシャツで隠して畳に胡坐をかく静雄を誘うと、あっさり潜りこんできた。
 外気に冷えた体はすぐに温もりに馴染む。
 軽く頬に口付け、具が溢れそうなトーストを味見する。仄かな甘味が舌に柔らかく纏わった。
「これ、俺のために用意してくれたの?」
「あ?」
「だって君、もっと甘いのが好きじゃない──一口、ちょうだい」
 静雄の皿に滴りそうなプリンを指先で掬って舐めとる。
 うん──吐き気がする。
「ね、もしかして、プリンが手作り?」
「──まずいか?」
 美味しい、と囁いて、色付く耳を軽く食んだ。
 びくりと静雄の肩が跳ねると共に、こちらの心拍も大きくなった。
「シズちゃん──」
 一段低い声が零れた、瞬間。手料理の前にいただこうとしたご馳走に、布団の外へ蹴り出された。
 寒気は先程よりも穏やかだ。
「──酷い…」
 臨也はのそのそ寝床へ戻り、潜ってしまった彼を覗き込む。
「早く食え」
「デザートは君?」
 俯せになって肘をつき、顎へ触れた。
「昨日、散々しただろ」
「だって、足りない」
 重ねようとした唇は、掌で妨害された。
「先、食えっつってんだろ」
「じゃあ──」
 掠れた響きにぎくり、と逃げようとした手を舐めあげる。
 かぁっと朱が走った。
「予約、のキスだけ──」
 手首を捕まえ、シーツに押し付けた。
 腹に跨り、顔を寄せる。
 ぎゅっと閉じられた瞼に口付け、唇を奪った。
「…んっ…」
 吐きそうな程甘い口内を堪能して、最後に唇を一舐めする。
「──おいしい」
 綺麗に上気した彼は、目と鼻の先で湯気をたてる朝食よりずっと美味しそうだ。
「──メシ」
「わかってる。もう一回──」
 温もりが、じんわり朝日に溶かされていった。




とまと様に捧げます。
ほのぼの…してますか? しまいには、ほのぼのってなんだっけ、と辞書ひいてました…揉めて、るかな…揉めてないですね、はい。
えろくはない…としかいえません…すみません。
改善要望ございましたらいつでも、いくらでもお受け致します。
よければまた、覗いてやってくださいね。
この度は企画ご参加ありがとうございました!


2011.8.3.永


あきゅろす。
無料HPエムペ!