GROWTH
臨也(臨静、R18)
 静雄は臨也に体を許すようになっても、相変わらず臨也を信用しきれないでいるようだ。それならセックスしなければいいじゃないか、と思わなくはないけれど、でもそんなことを言って本当にさせてくれなくなったらダメージを受けるのは臨也の方だという自覚はあるから口を噤む。
 だからといって、いざやが体内に入ると、別に色っぽい感じでもなく結合部を凝視されると落ち着かない。一体何を警戒しているのだ、性器の代わりにさり気なく良くない薬でも突っ込まれると思っているのだろうか。
「全く疑り深いな、君は。もっと俺を信じ、騙されてごらんよ」
 臨也の囁きに、静雄はこれ以上ないほどに嫌そうな顔をした。
「俺が? 手前を信用?」
 体内に深々といざやをくわえ込んでいるとは思えぬほどの冷たい声に、臨也もつい眉を寄せる。
「君の体内が外ほど強くなかったとしても、俺はここにナイフを突っ込もうなんて考えてはいないんだよ」
 あやすような口調で真実を囁いても静雄の瞳は凪がない。常人とは明らかに違う頑丈な筋肉で全身を武装してなお、内側の柔らかな粘膜は柔らかいまま保っている静雄は、大きく足を開いて彼を殺すならもしかしたら唯一の急所になるかもしれない場所をいざやのために差し出しながら、それでいて臨也のことはカケラも信用してくれないなど恐れ入る。
 肛門に凶器を突っ込んで殺したりなんかしたら、臨也が一番の容疑者になるだろう。そもそも臨也が人を殺すなら、自分の手を汚さぬようにすることくらい、静雄だってそろそろ知っていてもいい頃だ。
 静雄は血走った目で結合部を、というか出入りするいざやを睨みながら、しかし何も言わない。きっと今口を開いたら嬌声が零れ出るのだろう。頬も耳も胸元まで上気させて汗の粒を滲ませ、しずおは腹につくほど硬く反り返っている。荒い息に肩を上下させ胸を喘がせて、これで臨也に身を任せとろけた表情でもしていてくれたら臨也だってもっと素直に胸ときめかせることができるかもしれないのに。
 何を言っても無駄だと全身で主張している静雄に今回もまた匙を投げ、一際深く突き入れる。熱い呼気と共に子種を彼の一番奥へ吐き出した。
「っ…あ──」
 漸く目を逸らした静雄は低く呻くような声を恍惚と漏らし、ゆっくりと瞬いた。涙の雫が眦から押し出されシーツへ音もなく落ちた。
 静雄は、臨也を憎んでもいるだろうが、体を重ねることを許す程度に好意を抱いてもいるはずだ。臨也は、静雄が臨也を信用する素振りを見せないことに苛立っている。こんなことをするのが人間であったなら、臨也だって面白がることができただろう。
 だが静雄ではダメだ。
 静雄の行為の全ての予想外だけは、臨也を楽しませるどころかいつも不快にする。
 そして、ほら。まだ体の火照りも引かぬうちに静雄は息を乱したまま臨也の上体を押し、強引に体の繋がりを剥がしてしまう。
「──シズちゃんのバカ」


2020.12.14.永


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