GROWTH
坂本(桂坂、R18)
金時が髪切れち言うたがかー?わしゃァおまんの綺麗な髪が好きじゃき、そのまんまがえい思うぜよ。
おまんが真面目な目ェしてわしを見ちょるんが、どれだけ嬉しいかわかるがか。綺麗な髪も真っ直ぐな瞳も、純粋な心も、ちっくと抜けちょるとこまで堪らなくそそるんぜよ。
わしと、道ば踏み外してみませんか。


 幼なじみが桂の長い髪を揶揄して切れと唆す軽口は以前からよくあった。だが、それに従う気は毛頭なく、銀時だって本当に切ってほしいわけでもないはずだ。
 それとわかっていてなお、坂本と二人きりの寝所で髪を掌に掬い、対の手に小刀を握って本当に切ってみようかと嘯くと、坂本は大きく目を見開き、そして酷く真面目な顔をした。そうして想像したより真剣に桂の手を取り、ついには口説かれるに至って桂はたまらず吹き出した。坂本は笑い出した桂にきょとんと瞬き、そして眉根を下げたまま殊更に高笑う。それが可愛くて、桂は坂本の頬に軽く口付け耳元に唇を寄せた。
「道など疾うに踏み外しているだろう?」
 坂本がどう思っていようと、今更彼をどこかの女に渡すつもりはない。他の男にだって譲りはしない。初めて抱いたときからずっと、心と体に刷り込んでいたつもりだったが、さすがの鳥頭、大事なことがころりと転げ落ちてしまったらしい。
 桂は何か言いかけた坂本の唇を唇で塞ぎ、天然パーマの髪の根元から側頭部を梳き撫でる。
「俺は貴様を愛していると、以前にも言っただろう?」
 呼気の触れ合う距離で甘く囁くと、白眼の割合の大きな目を真ん丸にして暫く固まっていた坂本は、稍あってぽんと火の点いたように真っ赤になった。
「っ…わ、わ、わしもっ…愛しちょるきに」
 ひっくり返った声があまりに面白くて腹を抱えんばかりに笑う。拗ねたように尖った唇へもう一度唇を重ねた。
「──しゆう?」
 数度啄んでやるとすぐに頬をほんのりと染めたままおずおずと聞いてきた大柄な男を褥に誘導した。安物なのでふかふかとはいかないが、それなりに太陽に当て手入れを怠らぬ布団は乱暴に押し倒した坂本の背を柔らかく受け止める。着物の裾をズボンから引っ張り出して胸をぐいと寛げてやると、まだ触れてもいないのに中心の紅い芯はぷくりと尖り、坂本は桂の視線を恥じるように目を逸らした。
「しよう…よく、見ていろ」
 反射のように戻された瞳を真っ直ぐ捉えたまま、胸元に唇を寄せる。左胸の尖りを前歯で挟み、強く吸い上げた。
「っ…あ──」
 唇に感じる鼓動がますます高まり、下になった坂本の体温が上がったのがはっきりわかった。青い瞳が桂に向けられたまま潤み、頬の血色は引く気配がない。
 両足の狭間に腰を割り込ませ、屹立した雄同士を重ね合わせ体重で刺激しながら、胸の色付く粒を舌先でこねるように転がしてやる。
 ぎゅっと指先が白くなるほどに握られた手が桂の着物の袖に皺を寄せた。それでいて、おずおずと下になったまま腰を浮かせ、かつらを煽り立ててくる。衣服越しのもどかしい感触ながら明らかな高揚を伝えられ、自分の唇をぺろりと舐めた。
「そんなに煽るな、坂本──止められなくなるだろう?」
 理性を総動員して揶揄を向けるのをどう受け止めたのか、坂本は唇の端を吊り上げてみせた。
「道ば踏み外しゆうて、止まるも止まらんもなかろー?」
 ぎゅ、と頭を抱き締められ、芯からカッと燃えるように熱くなった。
 普段如何に己を律せんとしていても、雄の衝動がこんなに強く突き上げてはもはや制御などできるはずもない。
 言葉もなく指を舐り、下着の隙間から開かせた足の狭間の最奥を遠慮会釈なく探る。早く繋がりたくて堪らない。


2020.5.21.永


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