GROWTH
沖田(沖高、R18)
 過激派テロリストを経て英雄になって、結局同じ信念を追い求める高杉は、なんだかんだサディスト寄りに見えなくもない。目的のためには手段を選ばず、そのためには誰を手にかけることも厭わない男は、ともすれば通常の情とは異なる次元で生きているようですらあった。
 ──だが、ひょんなことから沖田と体を重ねる関係になった高杉は、閨の中ではどちらかというと逆であった。ドMでもないかもしれないが、少し痛いくらいの、ちょっと乱暴なくらいの刺激を好み、言葉で辱めてやると嫌がってみせるくせに体はより一層興奮しているのがありありとわかった。そしてそれは、常日頃Sと言われてはいるが日常の遊びみたいな調教ならともかく恋人として情交するならそこまで本格的なSMプレイを求めていない沖田とはぴったり合った。

高杉ってアレだろィ。S&Mで、一人SMやってやがるんだろィ。
──可愛い、ですがね。
普通に、ハマっちまいやした。俺ァ高杉に。高杉は俺に。なんでィ、この可愛げのねェロミジュリは。
世界が俺達を引き裂こうとしても、この絆は切れねェ…とでも言ってやらァ。アンタが惚れたきっかけが俺の外見だとしても構わねェや、俺ぁてめェの色香に惑った王子でィ。

 そのことにすぐに気付いて、それからはもう止まらない。どんどん夢中になってそうなるとあの痛々しい中二病全開の語彙すら愛おしい。
「沖田ァ」
 出逢い茶屋で二人逢い引き、と言ってもそんじょそこらの庶民向けでない高級な宿はメインが性行為であることを考えると勿体無いような露天風呂を有していて、無駄に開放的な建物の最上階で四方を自分達の借り切った部屋に囲まれた岩風呂の、それでも開けた頭上の星は都会にしては綺麗に瞬いているのを見た高杉はうっとりと息を吐き、正面の沖田の首に腕を回しぎゅっと抱き付いてきた。そうして耳元で濡れたような声を出し笑むものだから堪らない。
「降るような星じゃねーか、織り姫も彦星もさぞかし見られて興奮してるだろうぜ」
「──そりゃァてめェの方じゃねェのかィ」
 沖田は乱れた息に呆れた音を載せ、少し温い湯の浮力を利用し高杉を揺さぶった。それに素直に声を漏らし、高杉は首を傾げて沖田の顔を覗き込む。
「──お前さんは…」
「あ?」
 欲ばかりでなく濡れた瞳が星の光を受けきらきら輝いている。沖田は片眉を持ち上げ、最奥まで侵入したところで動きを止めた。自身をしっかりとくわえ込ませた入口を指先で撫でながら、高杉の隻眼をじっと見上げる。もどかしいように身を震わせる彼が愛おしい。
 現役のテロリストの筋肉を纏った腕が沖田の首に絡みついた。
「なんでィ」
「いや──てめェは、織り姫と牽牛に張れるくれェ、俺に惚れてくれているのかい」
 多分に艶を孕んだ高杉の、喜色を隠せぬほどに纏った声に沖田は大きく目を見開いた。頬に熱が上る。温いとはいえ湯船の中で、のぼせてしまいそうだ。
 沖田は、高杉の肩口へ額を押し付け、歯噛みし小さく唸った。
「──知らなかったとは言わせねェ」
 くくっ、と高杉の薄い胸が震えた。ついでに内部も不規則におきたを刺激し、息が乱れる。
「あァ…知ってたぜェ、お坊っちゃん」
 笑う彼の唇を奪うように口付け、ゴツゴツした岩を模した湯船の縁に高杉の背を押し付け乱暴に抉った。生意気な言葉を吐く余裕もなくなったように声を上げ、縋りついてくる腕が愛しくて堪らなくなった。
 こんな男に、と思うのに。それでもこんなにも互いに夢中になっていることをひしひしと感じて、それがこの上なく嬉しい。この時間を永劫にしたいくらいに。


2020.4.3.永


あきゅろす。
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