GROWTH
沖田と土方(沖土、R18)
「…ん」
 なんだか胸元がもぞもぞする。寝惚け眼を開くと、土方の裸の胸に抱き込まれた沖田がうっとり眼を閉じ土方の乳首に吸い付いていた。
 ──沖田と寝たことは、何度もある。性的な意味でも、そうでなくても。だから、朝までひとつの布団で過ごすのは珍しくもない。お子様体温の沖田が睡眠中、土方の抱き枕と化しているのも、冬場ならしょっちゅうだ。
 だが、いくら沖田がガキくさいとはいえ、母の乳をねだる幼子のように吸い付かれるのはさすがに前例がない。
 とりあえず、混乱する思考をどうにかしようと、彼の頭を軽く押し遣る。
 ──外れない。ますます強く吸い付かれ、両手で圧す。敏感な突起に歯をたてられた。
「お前、起きてんだろっ…」
「誰が寝てるなんて言いやした?」
 ようやっと口が外れたと思うと、両掌で胸元をやんわり揉みしだかれた。腰に、寝る前の甘い余韻が蘇る。
 閉ざした障子の向こうはまだ暗く、屯所はしんと静まりかえっている。
 まぁいいか、と土方は小さく息をつき、沖田の頭部を抱き寄せた。
 ──が。またその気になったのかと思わせた彼は、やたらとしつっこく胸元を撫でまわし、吸い上げるばかりで、ゆるゆる勃ちあがってきた下肢には見向きもしない。
「いい加減にしろっ、そこばっか…」
 あまりのしつこさに焦れた言葉は、緩く食い付かれ尻窄みに消えた。
 無感動な瞳が土方を見上げ、胸筋をじんわり嬲る。
「乳ってなぁ、揉むとでかくなるそうじゃねェですかィ」
「──あ?」
 大真面目に告げられた音は、咄嗟に意味を捕まえられなかった。
「ちと育ててやりてェんで、構わねェだろィ?」
 一応問いの形をとった言葉は、土方の応えなど待たない。
 いよいよ本気に胸筋を柔らかくねちっこく撫でまわされ、揉み解される。
「構うわっ! つうか、育たねぇよ!」
 真剣過ぎる表情で男の乳を──シュール過ぎて笑えない、それが自分の胸で、相手が付き合ってる奴なら、なおさら。
「現実を直視してくれ、頼むから! 俺ぁ男なんだよっ!」
 笑えないどころか、ぞくぞくする。
 気持ちいい、とはっきり思うにはあまりに弱い刺激がびりびり溜まり、じんわり腰の奥が重い。
 そっと内腿を擦り合わせると、にやりとわらわれた。
「たしかに…ヤローですねィ」
 不意に布越しにひじかたが掴まれた。ぎくりと肩が跳ね、期待に息を飲む。
 が、それはあっさり離れ、胸の突起を摘みあげられた。
「っあ…の、ヤロ──」
 そこより下をもっと…などと言えるわけもなく、そっと沖田の肩を掴んだ。
 くりくり甚振られる胸元から拡がる甘懈い痺れにそっと腰を逃がす、と片足を絡めて引き寄せられた。
 ずくん、と電流が脳を麻痺させる。が、沖田は土方の体を固定しただけで、その関心は変わらず小さな突起二つにのみ注がれている。
「──夢ェ、見たんでィ」
 ゆったりやんわり男の胸筋を揉みほぐしながらぽつんと吐かれた言葉に、一瞬脳がフリーズする。そんな土方に構わず、沖田は淡々と続けた。
「チャイナがねィ──俺がチャイナのこと好きなんだろって言いやがんでさ」
「そりゃ──」
 なら別れるか、と言う前に口元を手で軽く塞がれる。
「俺ァ、誰がてめェみてぇな貧乳相手にすっかィ、つったんだがねィ…よォく考えたら、あんたもぺっちゃんこじゃねェですかィ」
 そりゃあ男だからな、という言葉は、沖田のいやに切な気な表情に引っ込んだ。
「そしたら、姉ちゃんが、乳は揉むとでかくなるって…」
 なんだってそこでミツバが出てくるんだ。あぁそうか、夢の話だからか。そうだよな、夢なら仕方ねェよな。
「せめてあんた、ガキに飲ませられるくれェでかくしてくれりゃ…」
 ──土方が子供に、己の乳を吸わせることは生涯ないだろう。
 土方は唇を塞ぐ沖田の手を掴み、そっと引きはがす。
「お前──寝惚けてんだよ。もっかい寝ろよ、な?」
 少し声が揺れたのに気づき、唇を噛む。
 一瞬、本当に一瞬だけ、豊胸手術でもしようかなんて考えがよぎったのは、墓場まで持っていく秘密だ。


2012.4.6.永


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