GROWTH
桂と高杉(桂高、R15)
 久しぶりに会った高杉は、随分とかぶいていた。
 戦で散り散りになったものの、桂も高杉もそれぞれにまた手勢を集め、己の思想を根拠に一矢を報いんと水面下で活動を始めていた。そんな折、路地裏で鉢合わせた高杉は、ただの学友であった頃よりずっとぎらついた目をしていた。
 高杉は別段急いではいなかったらしく、ニヤニヤ笑って虚無僧姿の桂の耳元に顔を寄せた。
「元気そうじゃねーか、ヅラぁ…──匿ってやろうか?」
「ヅラじゃない桂だ。──やむを得ない」
 高杉とは異なり非常に急ぐ用が一、二本向こうの辻まで迫っていた桂は渡りに船とギリリと奥歯を噛み、顎を引く。高杉の冷たい手が桂の手首を絡め取り、踵を返した。
 そうして真隣にあった連れ込み宿に二人で上がり、桂は憮然と高杉を見やる。暫く会わぬ内に彼は、随分露出が増えていた。
「貴様は何故そのように、はしたなく色香を放つ箇所を見せびらかしている」
「あ? ──腹のことかい?」
「そうだ、そこは着物できちんと隠して然るべき場所だろう」
「確かにこの辺りにゃァ急所が密集してらァ。しかしよ、俺は衝かせはしねーから問題ねェ」
 しれっと嘯く高杉は、色香こそ増してはいたがどうにも無頓着だ。彼を変容させるに充分な行為が離れている間にあったのだろうとは思うのに、その調子だから非常に面白くない。
「衝かせはせずとも──あァそうか、誘っているのか」
 きょとんと右目を瞬いた高杉の印象は存外に幼い。その手首を掴み痩身を抱き寄せた。
 顎に触れて顔を上げさせる。彼の隻眼に映った桂は少し荒れた目をしていた。
 高杉の瞳がすうっと細められる。
 腰を抱かれ、少し背伸びした彼に唇を押し付けられた。
 頭の中がかっと熱くなった。
 こんな、こんな男は知らない。かつて幾度も抱いた体と具合こそ大きく変わらぬが、桂の未熟な愛撫に翻弄されてくれた初々しさはいつの間にか開花したらしい。桂の知らないうちに。頭に血が昇り、思考から冷静さが失われていく。
 開いた胸元から手を差し入れ、帯の内側のラインを辿る。少し緩かったのか、結び目が解けはらりと左右に着物を割り開いた。高杉の唇がにんまり弧を描く。
 ふと手を止めた桂に、素に返ったように高杉が呟く。
「俺とヤりたくねーかい?」
 その声は少し揺らいでいて、やっと彼は本質的には変わっていないことに思い至った。
「──俺には手垢の付いた者を愛でる趣味は──」
「大いにあるだろォ、熟女好きの人妻狂いのくせによ」
 目を逸らしても手は高杉に吸い付いてしまったかのように離れない。どうしようもなく、犯したい。彼もそれを望んでいる。いや、だが匿われた立場で──
 葛藤する桂の股間が無造作に鷲掴まれた。
「高杉ッ!?」
「何が歯止めをかけているのか知らねーが…何事もなく帰しはしねェぜ」


2019.2.16.永


あきゅろす。
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