GROWTH
近藤と新八(新近、R18)
 義弟君は、シスコンだ。そんなことは以前から知ってはいたが、それにしたってこれは予想外だ、と近藤は思う。
 新八が、志村妙のことで大事な話があるなどと言い出せば、近藤に断るという選択肢はない。だから、指定された恒道館をほいほい訪ね、姉上にはまだ内緒の話だから、と新八の部屋に通されても疑いもしなかった。
 だが、茶を出しもせぬまま縄を手に、当たり前のように腕を貸すよう言われ、反射的に従ってしまうと、あれよあれよという間に亀甲縛りに飾られ、手は背で合掌縛りが施され、もはやどうしたらいいのかわからない。
「ちょ…あの、新八君?」
「僕はね、中途半端な気持ちで姉上の周囲をうろついてもらいたくないんですよ」
「俺のお妙さんに対する想いは真剣だよ! だが、それとこの状況になんの関係が──」
「だからね、むしろ鼻フックデストロイヤーの刑に処さなかっただけでも評価されていいくらいだと思うんですよね」
「あのー、新八君? 俺の話聞こえてる?」
「さァ近藤さん。アンタの誠意見せてもらいますよ」
 新八の目は、姉への執着に完全にイっていた。
 だが、両膝を割開かれ、まだ発育途上の彼の体がその間に割り込んで、しかも隊服の上からこんどうに触れられてしまっては黙ってはいられない。
「あの…新八君の言う、誠意って──?」
「姉上が好きなら、僕に何をされても反応しないはずでしょう」
 言葉と同時にこんどうを強く握られ、近藤は息を呑む。
 そりゃァ、奇麗事を言えばそうかもしれない。そして、新八が強く拘る侍も、近藤達真選組も、もしかしたら攘夷志士だって、この腐った世で刀を腰に佩き背を伸ばし凛と抗う連中はみんな、奇麗事に支えられて生きているのかもしれない。
 だが、ある程度若い健全な男の性器は精神的な高揚だけに反応するのではなく、触られりゃよほどのことがない限り刺激に応えて勃起するようにできているのだ。精通を迎える以前に、それも幼い余りそのことに背徳を覚えなかった頃に、ふと手にした自分の体の突起物を弄っていたら、イきもしない逸物がしっかり勃ち上がり、あまりに驚いて病気にでもなったかといたく悲しみ、上手く言葉に出来ず泣きじゃくりジジイを困らせたのをうっすら覚えていた。新八だって男だ、同じ経験があるかないかはわからないが、そこが刺激に単純に反応する場所であるということくらい知っているはずだった。
 だが、今の彼にそんな正論を言ったところで通じるはずがない。
 近藤の袴を解き、褌を外す新八のまだ小さな手が与える刺激を意識せぬよう近藤は視線を泳がせる。
 しかし、べたべたと寺門通のポスターが貼られた室内では、今ひとつそちらの方向の思考から気が逸れない。寺門通にさほどの色気は感じないが彼女は普通に可愛らしく、しかも性器を直接に扱かれている。
 しかし志村妙への想いを認めてもらうためには、今こそ勃ってはいけないのだ。いくら年中ムラムラしていたとしても、今ここで勃起しないそれだけで、志村妙との交際をその弟に応援してもらえるのだ。後は志村妙の心以外に恋路を邪魔するものはない。難攻不落に見える彼女だって、掛け替えのない弟が勧めるならば今よりずっと軟化し近藤を愛するかもしれない。
 近藤は以前結婚しかけた王女の姿を脳裏に走らせ、萎えようと必死に努力する。しかし、ツボを心得た男の手淫についに芯を持ち始めてしまう、と同時に襖がノックされる。女神の声がした。
「新ちゃん? 誰か来ているの?」
 いつもいつもあんなにも会いたい志村妙の声を聞いて、つい完全に勃起する。焦る心に対抗するように手淫が激しくなる。絶望の淵に飲み込まれた。


2018.12.13.永


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