GROWTH
沖田と土方(沖土、R18)
世の中、早い奴と遅い奴なら、きっと早い奴の方が多いだろう。経験の浅い奴はとくに。
そして、自身の早さに悩んでいる奴は、遅ければいいような幻想を抱きがちだ。もっと息子が粘ってくれたら、相手をもっと楽しませてやれるのに、自分ももっと楽しむ余裕があるだろうに──
だがしかし、俺、土方十四郎はここで、遅けりゃいいってもんじゃないと断言しよう。
早いよりはいいだろうと思うかもしれないが、なんにでも適度ってものがあるのだ。
なんだってこんなことを語っているかって? 決まっている、実害があるからだ。
俺は今、沖田っつう部下の男と付き合っているんだが──そいつが、とにかく、もう、どうしようもないくらいに、遅いんだ。
長く楽しめていいでしょう、なんて笑うあいつだって悩んでいないわけでもないことも知っている。
チンピラ、なんて言葉を頭につけられようとも、ケーサツなんて商売をしている俺達は、常日頃からの鍛錬を怠ったりはしない。
しかし、十分や二十分なんてものではない、ヘタすりゃ一発出すのに数時間──なんてあいつは、日頃鍛えた気力と筋肉でその間腰を振るわけだ。
それでもなお垣間見える疲れに、つい、自分が動いてやるかとか、前戯でなるべく追い詰めておくかとか、そういう計算もする。しかし、一向に改善されない。
あいつがようやっといってくれたときには、互いに快楽よりも安堵で布団に沈む。
腰も足もガクガクで、もう二度とこいつとはしたくないと毎回思うのに、やっぱりまたしてしまうのは、惚れ合っているからだろうか。あいつとやって気持ちいいのなんて、最初の二十分くらいしかないと痛感しているのに。
そんなわけで。今日も俺達は屯所の中、勤務後に密やかな時間を重ねている。
「そうごっ…も、むり…ぁ、あ──っ…!」
息が苦しい。乱れきった呼吸ではうまく酸素を取り込めない。
自身を締め上げられ、沖田は苦し気な吐息を紡いだ。でも、まだまだいってくれなどしないのだ。
度を越した快感は臓腑を絞りあげ、いっぱいいっぱいの胎内を熱り立った雄が乱暴に拡げていく。
もういっそ失神してしまいたいのに、それも許さず敏感な箇所を抉る。
「なに言ってんでさぁ、土方さん。俺ぁまだ一回もいってやせんぜィ」
熱く乱れた息をつき、淡々と紡がれる言葉は、その意味を土方の脳まで伝えない。
「あ…ぁ…──」
一際深く奥をつかれ、喉が痙攣する。
震えるひじかたから透明な雫が腹筋へ滴った。
「──聞いてやせんねィ。あんただけ、いきっぱなしじゃあねぇですかィ」
自分も男である以上、相手の体内奥深くへ欲望を叩きつけたい気持ちはわかる。しかし、そこへ行き着くまでが苦しくて仕方ない。
自分は、いきどおしで。彼は、いけなくて。
違う理由で互いに苦しみ、熱い息を吐く唇を重ねる。
濡れた視界で、沖田が自嘲気味に笑った。
「ほら、まだ、いけるでしょう?」
「え…?」
口付けの間だけ休んで、また揺すぶられる。
全身が軋む。
「あ、っ…嫌だっ、んの──」
文句をききいれられることなど、期待してはいない。
それに、自分も、奥の奥へ──ほしい。
涙が布団へ散った。
「遅ぇんだよ…っあ、もう…」
道のりは、まだまだ遠い。
「ぃ、あぁっ…!」
ひじかたがびくびくと跳ねた。
2012.3.9.永
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