GROWTH
高杉(沖高、R18)
 世界を壊すなんて本気で宣う痛々しいヤツを、どうやら沖田は本気で惚れさせていたらしい。


 俺に狂え。
 俺を酔わせたんだ、てめェのその想い、果てるまで溺れさせてやらァ。
 ──見なァ。俺達の月は今日も麗しい。双眸に映らぬこの目映さ、俺の隻眼見据えるてめェには見えるだろォ。
 こりゃァよ、お前さんがいてくれるからなんだぜェ。


 二人きりの出逢い茶屋で、深夜に隻眼ぎらつかせぶつけられた愛の告白に暫し声も出ない。大体瞳に映る月の目映さなんて言われても、光源すら入り込まない薄暗い部屋、別段猫でもない高杉の瞳が物理的に輝くわけもなく、体を密着させているからにはどの辺りかくらいは察していても見えるはずもないのだ。
 だが、まあ…
 沖田は手触りのいい布地越しに彼の二の腕を掴み、口と思しき辺りへ唇を寄せる。そこは少しく外していたらしく、包帯の無粋な感触に眉根を寄せる、とすぐに柔らかな目的の箇所が押し付けられた。
 数度軽く啄み合い、沖田はそっと顎を引いた。
「まァ…つまり、てめェは俺のモンだってことだろィ」
「…──」
 小さく鼻を鳴らすのは肯定と判断し、その細い腰を掻き抱く。素直に膝へ跨がった男の帯を手探りで解いた。
「残念だが俺の想いとやらの果てる予定はねェけどねィ」
「っ…」
 手首へ裾を纏わせて、直接に下肢をまさぐる。
「てめェの酔いとやらじゃァ一夜明けたら醒めちまいそうだねィ」
 濡れた熱が手の甲に触れた。下帯のないところをみるとヤる気満々であったらしい。
「はっ…野郎の酔いをナメちゃいけねェ」
 とろりとした熱い粘液がゆっくりと沖田の手首まで伝う。
 酔いだかなんだか知らないが、この年嵩の男の性欲が自分と変わらぬほどなのは確からしい。
「へーへー…で、酔っぱらいは本能に忠実ってわけかィ」
 言い終わるや否や、耳朶に噛み付かれ肩が跳ねる。意趣返しにぎゅっと逸物を握ってやると、きつく食い込ませた牙の隙間から熱い息が鼓膜に寄せられた。
 じんじん響く痛みを歯を食いしばって耐え、強張る体を無理に動かしたかすぎを弄ぶ。
 ややあって濡れた声と共に耳朶が解放され、香の匂いのする髪がゆるゆる左右に振られた。
「っ…あ──」
「素直によがってりゃァいいんでィ」
 生理的な涙を数度瞬き追い払い、小さく舌を打つ。
「そんなヤツ、じゃァ…物足りねーだろォ」
「はっ…──」
 強く握ったたかすぎの先端に爪を食い込ませる。背を反らすのを許さず前髪を掴んで鼻先を接触させた。
「自惚れすぎだぜィ、高杉」
 低く唸ってみせたくらいで怯むほど、彼が殊勝であるはずはない。喉奥で声立ててわらい、唇同士が刹那触れ合った。
「あながち、的外れじゃ…ぅあ──」
 鈴口に血の滲むほど爪を差してやると、たまらぬように声があがる。それでもかぶりをふることさえ許さず、準備万端整った褥へ押し倒し鼠頚部を膝で押さえて身じろぎさえも禁じてやった。
 そうしておいて、首元へ唇を寄せる。淡く歯を立て喉仏に舌を這わせた。そっと髪を放してやると安堵する隙すら与えず喉の膨らみに犬歯を食い込ませた。
「──俺のモンのくせに、飼い主サマへ理屈こねる必要ねェだろィ」


2015.4.22.永


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