GROWTH
桂と近藤(近高、R15、3Z)
 桂とは、学校で顔を合わせればいつも、どこまでも平行線にしかならぬ口論を交わす関係だが、個々人としての相性はさほど悪くはないと近藤は思う。それは、校外で二人時間を重ねてみるうちの実感だ。ただ──彼は変人ではあるが…
 近藤は放課後、桂の自室に上がり込み彼秘蔵の本を開いて頬を染めた。
「わァ、すげェ!」
 肝心の場所にこそ墨が塗られているものの、スタイルの良い女性のオールヌード溢れる桂の所有品に比べ、近藤の持ち込んだものはあまりにお粗末だ。しかし桂は文句ひとついわず常の如く生真面目な表情で近藤のオカズであるグラビア誌のページを捲る。
「女の裸くらいでそんなに騒ぐでない。全く貴様は童貞でもあるまいに…」
「へ?」
 くどくどといつまでも続きそうな調子の中、近藤は首を傾げる。
「なんで知っとるんだ、桂」
 自慢ではないが、近藤には今付き合っている人物がいる。いるがしかし、学校で顔を合わせれば桂以上に敵対心剥き出しにせざるを得ない関係なので、親友にすら互いの関係性は隠している。もちろん、人前では口を利くどころか半径1mに近付くことすらほぼない。
 それに、近藤は全く女にはモテないので、勘違いされそうな仲の良い女友達は悲しいかないない。そんな秘匿し続けた二人だけれど、愛し合ってしまった事実は揺らがない。
 近藤はその相手と先日──本当につい先日、大人の階段を登ったばかりだ。怒り出すことが目に見えているため、沖田や土方にすら内緒にしたままで。
 なのに桂は平然と言い放った。
「貴様が誰とナニをしておるかなど疾うに知っている。俺の情報網をナメるでない」
「いや、だからなんでそんなこと──」
 片手を上げて遮り、桂は近藤の持ち込んだ雑誌の、青い水着を纏う真白い胸元に熱視線を送る。
「しかしいい乳だな」
「ちょっと桂ァ!?」


 真面目なのかすっとぼけているのかサッパリわからない桂から何かを聞き出すのは早々に諦め、その夜に呼び出し問い詰めた高杉は、あっさりと口を割った。
「…幼馴染み?」
「あァ、幼稚園から塾までずっと一緒だぜ」
 中学校までは道場に行く以外習い事のひとつとも無縁だった近藤は、育ちの違いを強く感じたが、今の問題はそこではない。
「で…シたのシてないのなんて言ったのか、お前」
「いつまでもガキみてェな物言いしやがるからだ」
 けっ、と顔をしかめてみせる隻眼の高校生──こんな男が、近藤には問答無用で愛らしく見えるのだ。
「…で?」
「俺にだってオトコくらいいるんだぜ、って言ってやったら大騒ぎしやがってよ」
 そりゃあそうだろう、近藤だって土方や沖田に彼氏ができたと聞いたら目を剥く自信がある。
「面白ェから、最後までイった仲だって言ってやったのさ」
 くくっと喉を鳴らす彼に溜息をつき、近藤は高杉の頭を抱き寄せた。


2014.8.16.永


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!