GROWTH
沖田(沖土、R12)
 愛してるから殺してぇんでさぁ。
 でも、殺してぇから愛してんじゃねぇんですぜ、わかんだろィ?



 不覚にも斬撃を食らい、膝をついた土方が、沖田の度重なる襲撃に業を煮やしてその目的を問うたとき。彼は、にやりと笑ってそう言った。
 ぎらぎらと得体の知れない興奮に瞳を燃やし、低く淡々と。
 一瞬呆気にとられた土方の喉元へ白刃が突き付けられ、その峰で顎を僅か持ち上げられる。
 どろどろと土方の血に塗れた刀は優しく土方の肌を擽り、愛おしそうにその襟へ紅を零した。
「──土方さん」
 ふんわりと花の咲くように微笑んだ沖田は、表情に似合わぬ低い声でそっと呻いた。
「俺ぁ、あんたを殺しちまったらいいんですかねィ?」
 甘い眼差しが土方を絡めとる。
 だが、こればかりは認めるわけにはいかないし、また認めたくもない。
「…そうご──」
 掠れた音が土方の声帯を震わせ、落ちた。
「──俺ぁ、あんたを殺したら──ラクに、なれやすよねィ」
「…ら、く…?」
 息遣いさえ響く程に張り詰めた空気が僅か揺らいだ。
 殺意に冷えた瞳に、もう高揚は見られない。刃が喉に浅く食い込む。
「俺ァ──」
 すっ、と刀が引かれる。
 大きく振りかぶった沖田は、珍しく隙だらけだ。なのに動けない土方に、彼は唇の端を持ち上げる。
「覚悟はできてるってかィ…?」
 そんなはずがない。
 が、体が先に抵抗をやめ、動かない。峰で殴り飛ばされ、呼吸が一瞬止まった。


2012.1.10.永


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