GROWTH
沖田と土方(沖土、R18)
 沖田が重々しい表情と声音でその話を切り出したのは、あまりにも場違いなときだった。
「土方さん、煙草吸ってりゃインポになるって言いやすよねィ」
 沖田の眼前で、インポのイの字も見えぬ熱り立ったひじかたが小さく震えた。言うまでもなく、そういうことをしている最中である。
「あァ…んな都市伝説あったな」
 それでも律儀にそう答えてやる自分は実はすごく優しいのではないだろうかとすら思う。
 沖田は深刻な表情を崩さずひじかたの根元から先端までゆったりと包みすき上げた。
「都市伝説?」
「っ…ん、デマってことだ、それより総悟──」
 緩い動きに無表情、淡々とした口調の沖田相手でも、いや、コイツ相手だからひじかたを煽られれば吐息も上がるし鼓動も高鳴るのである。彼の態度がその気があるのかないのかサッパリわからぬものであってもそれは変わらない。
 ──惚れた男なのだから。
「んじゃァ、フクチョーエンってヤツが周りに煙草の害を撒いてるってェのも都市伝説ですかィ?」
 瞬間、沖田の声が低く塒を巻いた気がして、ちらりとその表情を窺う。しかし彼は面白くも楽しくもなさそうな無表情でひじかたを弄んでいた。
 土方はさり気なく腰を引き、呼気を平坦に保とうと尽力する。
「副流煙だな…そりゃァ、マジじゃねェのか」
 正直なところ、そんな話どうでもいい。いや、煙草の害悪性は理解しているけれど、今それを語り合う必要性が理解できない。
「なァその話、今じゃねェと駄目なのか?」
「やっぱりかィ…」
 土方のプライドが邪魔をして、あからさまにし難い不満にも気づかぬように、沖田はそっと僅かにうなだれる。彼がこういう弱った姿を見せるのは珍しいなんてモンじゃない。
 だが、たまに見せてくれた弱みに感動する余裕もないほど、ひじかたはじりじり高ぶっていた。
「何がだよ、つうか煽るだけ煽っておいてなんだよ。やるんじゃねェのか」
「アンタのせいでィ…」
「やんねェなら俺ァまだ仕事があんだよ」
「責任、取ってもらいやしょう」
 苛々と言葉を投げると、低い声がきっちり反応する。しかしその内容はまるで噛み合わず苛立ちが募る。
「だから、なんだっつって──」
 沖田は土方を真っ直ぐ見据え、ゆっくりと自身の下帯を解いた。ようやっと、と生唾が自然に湧く…
 それは中途半端に分泌を止めた。
「マジか…」
 そっと露わにされたおきたに触れる。
 ふにゃりと柔らかい感触は、むしろこちらが通常状態のはずなのに彼のとなると見慣れず新鮮だ。
「マジ、でさァ。アンタホントムカつく野郎ですねィ、どう落とし前つけてくれんでィ、アンタの副長煙──」
「副流煙だってんだろ」
 滔々と述べられる言葉を遮り、そおっと触れる。
 いつも出す頃には臨戦態勢になっているおきたは、今ぴくりとも反応しない。
 意地になって裏筋を撫で上げ、括れを擦り先端に指を絡めて掌で鈴口を刺激する。
 ──ダメ、だ。
「…つうか関係ねェだろ、それ。煙草とインポは──」
 弛まぬ努力の肩にずっしり疲労が纏わる。
「はっきり言うんじゃねェや…」
 ぼそりと漏れた反論はいつもよりずっと力無かった。


2013.2.7.永


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