GROWTH
沖田と土方(沖土、R18)
 さんざ焦らして、なぶって。土方をとろっとろに溶かした挙げ句、沖田は寝具に胡座をかいてあっさりぬかした。
「土方さん、乗りなせェ。連れてってやりやすから」
 互いに素っ裸で向かい合い、吐息を乱してそんなことを言われて。ハイそうですかと彼に跨がれようはずもない。
 だから、敢えて知らぬフリをした。
「何処にだ? 天国か?」
 頬を上気させおきたもガチガチに勃起してはいるが、沖田はまだ表面上平静を装えている。しかし先程までの前戯で散々酷使された土方の喉を通過した声は欲情に掠れていて、どうにもこうにもサマにならない。
 沖田は、にまァと嫌な笑みを浮かべ、そっと土方の頬に触れた。
「──アンタ、自分が天国なんてェトコに逝けると思ってんですかィ?」
「やっぱり地獄か…」
 一般的に天国に近い表現をされがちな絶頂も、こと沖田の手にかかれば地獄でもなんら遜色ない。
 ──気持ちよくないわけではないのが、なんとも腹立たしいけれども。
「嫌いじゃァねェでしょう、アンタ」
 沖田の指先が左の眼窩の縁を緩くなぞった。
 微かな圧迫がずしりとした痛みを与え、僅か身じろぐ。
 紅い瞳が楽しげに細められた。
「──自惚れんなよ」
 土方は左目を眇め沖田の手を掴む。高まってしまった自身はまだまだ落ち着きなどしないけれども、上がった息だけでも抑え込み沖田を精一杯キツく睨んだ。
 ひとまわりは小さい彼の手に指を絡め口を寄せる。
 沖田の瞳を見据え、その人差し指を口に含んだ。土方の舌をつつく彼の指にぎゅっと歯をたてる。
 口内に血の味が広がっても、沖田の眼差しは笑みを孕んだままだった。とくとくと溢れ出す血液を吸い上げ、目許で沖田に笑みを返す。
 彼の親指が土方の顎下を軽く擽った。
「乳が恋しいんですかィ?」
「は…──テメェと一緒にするんじゃねェ」
 ちゅぷ、と濡れた音をたて息を継ぐ。
 仄朱い液体を纏った指先が邪魔するように深く口内へ突き入れられた。
 舌の中央をキツく押され、ぐ、と喉が鳴る。反射的に込み上げる嘔吐感を噛み殺して舌を絡めた。
「ん、く…」
 乱暴に抜き差しされ、唾液を嚥下する暇もない。
 ぐちゅぐちゅと濡れた音が響き、口端から溢れる唾に頬が火照る。
 含んだ手をぎゅっと握ると、空いた彼の掌がひじかたをするりと逆撫でた。びくりと背が震える。
「っあ──」
 と同時に口にした指が退かれる。
 沖田の紅い舌がしとどに濡れたそれを舐めた。
 思わずごくりと土方の喉が鳴る。しまったと思ったけれども、視線を逸らすことも出来ない。
 沖田の口端がゆっくりつり上がる。
「──乗りなせェ、土方さん」
 魅入られたようにおずおずと、腰を浮かせた。


2013.1.26.永


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