GROWTH
沖田と土方(沖土、R18)
「土方さん、見てくだせェ、この特集。棒状のものを入れて、1〆、2〆…括約筋の筋トレだそうですぜィ」
「妙な雑誌を読むなっ! つうか──緩い、か? 俺…」
「いやァ、けど面白そうじゃねェですか。棒状ってェと、ちょうどいいのがありやすし」
「やりてェなら、はっきりそう言ったらどうなんだ…」
「土方さん、筋トレやりやせんか?」
「違ェェェェ!」


 土方の交際相手は、素直でない。
 どのくらい素直でないかというと、愛情転じて憎しみになり、でも憎いばかりでもない自身の感情を持て余して。隙あらばと土方の命を狙い、夜伽の後は必ずといっていいほど布団を抜け出し、藁人形に釘を打つくらいだ。
 色々と諦観の境地に達している土方ではある、しかし誘い方くらいはもう少し普通にしてくれてもいいんじゃないかと切実に思う。
 いや、直してほしいところは多々あるし、それも含めて愛していると、告げないけれど思っているが。
 彼が問題だらけなのは事実だ。でも、さすがにこれはないだろうと思うのだ。無駄に心臓に悪い。ただでさえ、夜伽を重ねる度垂れ流しの恐怖に密かに怯えているのに。それをわかっているからこそ、そこをつつきたがり、そのくせコトが始まるとやたら温かい手で土方を愛おしみ、瞳を甘く撓ませ…タチが悪いの一語に尽きる。おかげで土方の心臓は沖田といるだけでフル稼働、常に吊り橋の上でガンガン揺さぶられ通して身が保たない。
「土方さんだって、してェでしょう?」
「俺ァまだ仕事中だ」
 瞳孔かっ開いて睨みつけたって効果はない。
 スカーフを奪われ、不穏な手付きが首筋をなぞり背が微かに震える。
 気付かれたくなかったのに敏感に察し、満足げに口角を持ち上げる彼が恨めしい。
 一人余裕ぶられるのが気に入らなくて、沖田の着流しの胸元を掴み引き寄せた。
 僅か見開かれた大きな瞳を片手で覆い、薄く開かれた唇に噛み付くように口付ける。吐息ごと吸い上げ、舌先をねじ込んだ。
 沖田がくつりと喉奥で笑う。
 侵入してきた舌を軽くはんだ。
「んっ…」
 ぞくぞくと痺れが脳天まで突き抜け、彼の着物を掴んだ手に力が籠る。腰を引き寄せられ、足の間を膝頭で緩く圧された。
「っ、は…」
 軽くかぶりを振って息をつく。唇が追い縋ってきた。
 頭を片手で抱かれ、とさりと畳へ押し倒される。熱い舌に舌を絡め取られた。
 ひんやりした手が首筋をくすぐる。ようやく思う様空気を貪ったときには、腰を甘怠い痺れがはんでいた。
 こんな年下の男にいいようにされて、腹立たしい、けれど。
「ん、っ…あ──」
 じりじりズボンのチャックを引き下ろされた。
 ひんやりした空気が下着越しにひじかたへ擦りより、もどかしさに腰が震える。
「鍛えておかねェと──緩くなっちまいやすからねィ」
 もっともらしい口調で大嘘を呟いて、沖田の指先が下着の上から土方の後腔を探った。
「──ん…っ!」
 冷静さを多分に欠いた思考回路でも、沖田がむちゃくちゃを言っているのはわかる。それでも、ぐりぐりそこを圧迫され濡れた声が漏れた。
 淡い色の髪を揺らして沖田が小さく笑う。
 たったそれだけで、きゅうと心臓が絞り上げられたように息苦しくなり、乱れた息を紡ぐ。
 唇で唇を塞がれると頭がぽおっと火照って、困ったものだ。
 仕事とか、年齢とか、屁理屈とか。そんな些末なものよりも、彼がここにいて自分を求めてくれることが何より嬉しいだなどと。決して言いはしないけれど。


2013.1.10.永


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