GROWTH
沖田と土方(沖土、R18)
すっかり夜も更け、しんと静まりかえった屯所内で、紙を繰る音だけが微かに響く。
ちょっと待ってろ、と言われ土方の布団に潜り早三時間。彼の‘ちょっと’はまだ終わりそうにない。
ごろごろと姿勢を変え、薄明るい行灯に照らされた彼の横顔を見遣る。書類の山を崩すその表情は真剣で、見蕩れてしまう──なんて、決して口に出しはしないけれど。
不意に土方が顔を上げる。その視線を辿った空には、星ひとつ見えない。僅かに雨の匂いがした。
「…月が綺麗だな」
だから、なんでもないように吐かれた言葉の意味が即座に理解できなかった。
「月なんざ出てやせんぜ?」
まさか疲労でおかしくなったか、と思わせた男は、やけに真剣な瞳を沖田に向けた。そうして、真面目な音を紡ぐ。
「いいよなぁ」
どきり、と鼓動が大きくなった。急に暑くなった気がして、ばさりと布団を剥ぐ。
のそのそ這い出し、土方の胡坐の前に座った。
「何の話でィ」
ぼんやり開いた瞳孔が、じっと沖田を見据えた。
すう、とかさついた指先が目元に触れる。
「いい月だ──」
く、と頬骨を圧された。
とっさに右手で彼の手を掴む。紅い唇が、にやりと弧を描いた。
「──叩き割りたくなる」
ぎゅ、と彼の大きな手を握った。
視線は外れない。
彼に片膝を乗り上げ、項に触れた。体温が首筋に近づく。
「──割れるもんなら、割ってみなせェ」
後頭部をぐしゃぐしゃと掻き回した。
「んなこと、させやしませんがねィ」
肩口に額を擦り付けられた。
寝乱れた襟元をあつい吐息が擽る。
肩を掴んで畳に押し付ける、と存外にあっさり従った。下になった彼が、にやりと唇の端を吊り上げる。
ゆっくりと腰帯を辿った。
「ちっと、ってなァ──」
「さっき、終わった」
待たせたな、と紅い唇が艶やかな弧を描く。
苛立ちをぶつけるように噛みついた。
「っ…ん」
開放されたままの障子から入り込んだ雨粒が、ぱたぱた畳を打った。
湿った空気が火照った肌をなぞる。
甘えるように喉を鳴らした土方に、背を抱き寄せられた。
「しつけェ…」
土方の後腔が指を銜えてくちゅりと呻いた。
「俺ァ、ずっと待ってたんですぜィ」
弱点を爪先で引っ掻くと、びくびく背が撓った。縋るように二の腕を掴まれ、ぎゅっと握られる。
開いた瞳孔が、涙の膜越しにつよく沖田を睨みあげた。紅い唇が物言いたげに動き、熱い呼気を紡ぐ。
沖田はやんわり口端を持ち上げ、彼の太腿を掴んで開かせた。
薄青い瞳が行灯の光を反射してきらきら輝く。
指を引き抜き、口を開いた後腔に雄を押し付けた。
「いやァ…──綺麗な、月でさァ」
一瞬見開かれた双眸は、そうごの侵入に眇められた。
2012.6.13.永
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