GROWTH
高杉(高土、R18)
「もっと…? それだけじゃァわからねェ。はっきりとわかるように言ってみな。もっと優しく? はたまたもっと酷く? もっと虐めて…なんだどれも違うのかい。それじゃァ俺には思いもつかねェ言葉なのかもしれねェな。さァ、その声帯震わせて吠えてみな。もっと愛して…ってよォ」
 勇気を振り絞り、囁くようにねだった言葉を、高杉は子供をあやすような調子で、しかしそれにしてはやたらとあくどい顔をして有耶無耶にした。存外に温かい掌が土方の頬に確かめるように触れ、喉を鳴らして笑う。いっそ殺してやりたい。だがヤツの首を掻き斬るには、大きく開いた足の間に高杉の体を割り込ませ、その雄が深々と体内に突き立てられているこの現状は些か分が悪かった。だからせめて、タチの悪い中二病を拗らせたたかすぎを意図的に締め上げ小さく呻かせてやる。土方だって、ヤツの急所を押さえているのは同じなのだ、ただヤられているだけではない。案の定、高杉は息を震わせ土方の顔の脇にどさりと手をつく。欲に潤んだ隻眼に睨まれても、小気味良いばかりだ。
「──どうした、高杉。もっと鳴かせてくれるんだろォ」
 唇の端を持ち上げてはみせるが、本当は高杉以上に土方だって切羽詰まっている。イきそうでイけないのは、もどかしいばかりではない。
 高杉はぎゅっと眉を寄せ、ひじかたの根元に骨張った指を絡ませ握り込んだ。咄嗟に胸を喘がせた土方に負けず劣らず呼気を乱し陶然と濡れた瞳で甘く笑む。
「──あんまり、締めるんじゃねェ」
「てめェこそ──変な格好つけてるんじゃねェ」
 二の腕を強く握り、わざと爪を立ててやる。苦しげに息を吐きながら紅い唇が嫣然と弧を描いた。呼気のぶつかる程に顔を寄せられ、熱い息が唇の薄い皮膚を舐る。顔を逸らしてしまいたいのにそれもできず、沸々と込み上げてくる高鳴りに眉根を寄せた。たかすぎを受け入れるために大きく開いた膝を身じろがせ、互いの体の下ですっかりよれた敷布を爪先で掻き乱す。腹筋が小さくひくついた。
 どちらも余裕なんか疾うに失っているのに、高杉だけまだまだ土方を御せるような素振りをしているのが気に食わない。意志に反し痙攣する筋肉に力を込めて上体を起こし、高杉を突き飛ばすようにして繋がったまま体勢を替えた。ぐ、と角度の変わったかれに内部を抉られ息が詰まる。ぽおっと思考までとろけるように目許に朱を掃いて、彼を卑睨した。
「てめェがやらねーなら、俺がしてやらァ」
 欲に思考が飲まれていなければ、とてもできはしない。彼がいつも浮かべる嫣然とした笑みを脳裏に思い描き、真似をするつもりで唇の端を吊り上げる。深々とくわえた雄からじりじりと腰を持ち上げ、半ばまで引き抜き、もう一度奥まで。たかすぎが、高杉の意志でもって土方を掻き乱すときの、気の遠くなりそうな快感を知っていた。しかし、高杉に縋ってそれを引き出すなど矜持が許さない。土方は、高杉に平伏す崇拝者ではないのだ。立場も何もかもが邪魔になる関係で、それでも密かに灯してしまった思いを誰にも揶揄させない。そう、高杉にさえも。
 色事の最中にしては無駄に鋭い瞳を相手に向け、息を乱し上気する体を制御しきれず不器用に自ら動き出した土方を高杉は目を丸くして眺め、稍あって土方の腰を荒く掴んだ。
「っ…あ──やっと、その気に…ん、なった、かよ…」
 そのまま思う様抉り貫かれ、喉を言葉にならない音が突き上げる。高杉は肩を喘がせ苦笑った。
「あァ──とんだ、じゃじゃ馬だぜェ…」


2021.5.11.永


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