GROWTH
沖田と土方(沖土、R18)
雀の声を合図に、温かな布団から滑り出た。
すやすやと眠る沖田の首には見慣れたアイマスクが引っかかっている。
土方は幼さの残る寝顔から視線を逸らし、押し入れを探る。手拭いを肩にかけ、襖をそっと引いた。
「──ん…」
微かに漏れた声にぎくりと振り返った。
沖田の手がぱたぱたと周囲を探り、土方の枕を抱き寄せてまた丸くなった。
──少し、面白くない。
土方が顔を洗って戻って来ても、沖田はまだ枕を抱えてすやすや眠っていた。
匂いは移っているかもしれないが、あれは俺じゃない、なんてことを沖田を起こしてまで主張できるはずもなく、ハンガーにかけた隊服を取る。なるべく音を立てないよう気を遣い、そっと夜着を脱ぎ捨てる。
ちらちらと沖田を気にしながら、ズボンのチャックを──
「痛っ…」
漏れてしまった声に、沖田がぱちりと目を開く。あまりの反応の良さに、こいつ実は狸寝入りだったんじゃ、と思うがそんなこと指摘する余裕もなく畳に膝をついた。
「どうしやした?」
「いや──なんでもねェ」
あれだけ大切そうに抱きしめていた枕を放り出し、沖田が寄ってくる。
「嘘つくなィ。チンコがどうかしやしたかィ、見せてみなァ」
前屈みに膝をついた。肩を掴まれ、伸し掛かられる。
「なんでもねぇっつってんだろ…っ!」
普段なら簡単に振り払えるはずなのに、ダメージが大き過ぎてそうできずに尻をつく。ぐいと腰を引き寄せられた。
「くそ──」
「ありゃあ…」
耳元で、感心したような吐息が響く。
「挟んじまったんですかィ」
中途半端に上がっていたチャックが下げられる。
肌着越しにやんわり握られた。
「こりゃあ痛そうですねィ」
ウエストのゴムを引かれ、直接自身をなぞられた。
「お前、すげぇ嬉しそうなんだけどォ!?」
にやり、と彼の呼気が揺れて背筋がぞくりとした。
「──気のせいでさぁ」
「今、笑ったよな、おいっ! にやって笑ったよなっ!?」
ねっとりと首筋を舐めあげられる。堪らず畳に頽れた。
「何言ってやがんですかィ、気のせいだってんだろ」
にやけた息に、説得力なんてものが存在しているはずもない。
裸のままの上半身を、臍から胸まで爪先がつうっと逆撫でした。
びくりと震える呼気に食い付かれる。瞼をぎゅっと閉ざす、と生理的にたまっていた涙がころりと零れ落ちた。
寝乱れた沖田の袖を掴む。あっさりと肩からずり落ちた。
やんわり扱かれたひじかたがくちゅりと呻いた。
「朝っぱらから元気でさぁねィ」
揶揄されても、勃ってしまったものは今更縮まない。
うっすら滲んだ血液と、先走りが絡む。傷口にぴりりと凍みた。
なのに、萎えない。
それすらも気持ちいいなんて、決して認めたくないけれど。
裏筋を包みこむように扱きあげられ、腹筋がひくついた。
面白そうに口元を歪ませた沖田の呼気が僅か乱れて耳朶を擽る。
彼の肩口へ頭を預け、口元に迫った喉仏をぺろりと舐めた。
ぎくり、と沖田の肩が跳ねる。
仕返しに鈴口を爪で抉られ、ずきりと甘い痛みが脊髄を駆け上がった。
どろりと白い蜜が沖田の手を汚す。
はぁはぁと乱れた吐息が朝の空気を震わせた。
熱り立ったおきたが腰へ擦り付けられる。そっと唇を近付け──
「副長っ!」
副長室の襖が開放される、と同時に土方は沖田を突き飛ばした。
廊下に背を向け立ち上がり、何事もなかったように自身を下着に押し込んだ。濡れた感触が気持ち悪い。
「──どうした?」
睨む沖田を黙殺し、注意深くズボンのチャックを引き上げる。
「あ…えぇと、その、テロ予告が──」
「わかった、すぐ行く」
土方は大きくかぶりを振って甘い熱を追い払った。
一日は、始まったばかりだ。
2012.5.30.永
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