SILVER

 沖田の呼吸が徐々に深くなっていくのを肌で感じ、すっかりと寝入ったのを確信してから土方はゆっくり瞼を持ち上げる。薄ぼんやりと室内を照らす光を受けた沖田の、まだ幼くすら見える寝顔を見下ろした。夢現に聞こえた言葉が、紛れもない現実だったのだろうと確信して、耳までほんのり熱を持つ。寝ている相手に言うなど、狡い。諾うことすらできない。沖田はなんだかんだ言ってプライドが高く、打たれ弱いから、きっと土方が動いた方が早くコトは進むのだろう。抱くことを許している時点で、ヤツが欲しいのは土方も同じであることくらい伝わっているはずだと思いたいが、どうやら彼は男が男に足を開くことの大きさを理解していないらしい。こんなに譲歩していて、しかもヤツの想いまでも確信しているのだから、もう少し沖田が自信を付けるのを待っていてやろうか。散々土方を舐めてかかっているクソガキに描き口説かれるのはきっと気分がいい。ベッドサイドの薄明かりを受けた沖田は、起きているときよりずっと幼く見えて、まだ性の何たるかも知らぬ子供だと言われても信じてしまいそうだった。だがこんな関係に至ったのは別に土方がかどわかしたからではないし、いくら童顔であっても15をとうに超えているのだから立派な大人である。土方は唇の端を持ち上げ、そっと沖田の額へ唇を押し付けた。ほんのりと汗ばんだ温かさに安心して髪の絡むほど近くへ頭を下ろし、そっと目を閉じる。沖田が土方を口説くなら、どんな手で来るのだろう。今まで散々嫌がらせをされてきたのだから、できれぱ正攻法がありがたい。でも沖田のことだからもしかしたら、命を狙うお茶目が悪化したような手で来るかもしれない。それはできれば嫌だ。存外に気を遣って優しいノーマルなセックスをする男だから、センスはそこまで悪くはないと思いたい──のだけれど。土方は薄く目を開け、沖田が目覚める気配がないのを確認してから髪に鼻先を押し付け、肺一杯に深く息を吸い込んだ。
「俺ァできりゃァ大事にされてェぜ」
 ひく、と沖田の睫毛が動く。起きているのかそうでないのかを確かめないまま、彼の香りを胸に満たしてゆっくりと目を閉じた。今夜はいい夢が見られそうだ。


2021.7.8.永


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あきゅろす。
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