SILVER
11(R15)
 土方は、眠っていればなかなか可愛いと思う。いつも瞳孔をかっ開き、ガラの悪さばかりが目につくからさほど意識しないで済んでいるが、こうして伽の後二人並んで横になり、薄暗がりで彼の寝顔なんて見つめ放題の状況になってしまうとしみじみそう思う。起きているときよりもずっと素直になれる気がして、そっと沖田より大きな手に指を絡めた。本当は、彼の全部がほしかった。でもそれを口に出すと、沖田が立っていられなくなる気がした。沖田は、土方無しでは生きていけない自分などいらないのに、そうなってしまいそうな気がして恐ろしかった。ミツバなら、きちんと自分を保ったまま土方を愛することができたのだろうに、沖田はこんなにも脆い。心は、きっと一生姉には敵わないのだろう。それでも沖田はミツバよりずっと土方の近くにいることを許されている。土方は、ミツバを本気で想っていたからこそ、彼女と生きる道は決して選ぼうとしなかったのに。つまり土方もとても臆病なのだ。だから、沖田がしっかりしなくてはいけない。土方が頼れるくらいに強くなったら、土方に撮って守るべき存在でなくなったら、きっとようやくそこから本当の意味でスタートが切れる。体の関係があるけれど可愛い弟、ではいつまで経ってもその先に進めない。それでも、隣にいても眠れてしまえるくらいの信頼だけであっても、それがなかなか得られないものだと分かっている。沖田だって、隣にいられても眠れる存在はさほど多くはない。そうやって得ているものが確かに大きく、そしてまた少々何を言おうとやろうと滅多に崩れることのないものが築けている自負があるからこそ、これを一歩進んでみたくなるのだ。土方は、沖田が土方に性欲以上の深い、友情以上の重いものを抱いていると確信しているはずだ。そしてまた、土方も沖田を憎からず想っているのは間違いない。
「土方さァん」
 彼が起きないだろうくらいに声を落とし、そっと囁く。静かな呼吸は乱れもしないのに気を大きくして、そっと体を擦り寄せ軽く唇に唇を重ねた。
「俺と、ちゃんと付き合いやしょーよ。大事にできるかはわかりやせんけど」
 土方の睫毛がぴくりと動く。起こしてしまったかな、と僅かに息を潜めはしたが、どちらでも構わなかった。夢に見るくらい沖田のことを気にしているのだと勘違いしてくれてもいいし、実は狸寝入りでも構わない。沖田は土方の鎖骨に額を寄せ、そっと目を閉じた。


2021.7.8.永


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あきゅろす。
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