SILVER
5(R15)
 酒が醒めて冷静になると、副長と一番隊隊長が揃って無断外泊の挙げ句に連れ立って朝帰りだなんて事態に気付いて、重い腰とぐらつく頭を抱えて項垂れる。沖田は妙にすっきりした表情ですやすや眠っているのだから余計に癇に障る。腹立たしいからベッドから蹴り落としてやった。流石の反射神経で咄嗟に受け身をとり、寝起きの割には鋭い瞳で土方を床の上から見上げた沖田は、目が合うと少し気まずそうに目を逸らした。それに少しばかり溜飲を下げ、マヨボロを銜え火を点ける。
 全身ベタついて気持ち悪い。腰の下のかぴかぴした感触は、もしかしなくてもあれだろう。シャワーを浴びないととても帰れそうにない。
 沖田もその状態は似たり寄ったりのはずで、のろのろと立ち上がり不快さを滲ませ自分の体を見下ろした。
「──先に湯を使いまさァ」
「あァ…行ってこい」
 気だるげな足取りで浴室に消える背を見送り、また前より逞しくなったな、と思う。あんなに小さかった少年が、土方の傍でどんどん大きくなっていく。それが誇らしくもあり、少し寂しくもあった。
 どんなに好きになったって、きっと一生こんな関係を続けたりなど出来やしない。だから安心して彼の手を取れたのだけれど、でも成長してしまうことはいつか来る別れにまた1歩近付いたのだとも感じてしまう。それでも構わない程に愛していたのだと、いつか笑って話せるだろうか。そんなに達観できるほど長生きするとも思えない。ならば、地獄の血の池で泳ぎながら、あの頃はどんなに切なくても、お前がいたから幸せだったなんて笑えるのかもしれない。こんなにも誰かを好きになれただけで、きっとこの上ない僥倖なのだ。


2021.7.3.永


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あきゅろす。
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