SILVER
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 土方は、銀時との酒の席が楽しかったのか、はたまた屯所外の居酒屋で沖田と飲むなんて非日常に背を押されたのか、真っ先にぐでんぐでんになって沖田にどさりと凭れてきた。店主や銀時に言わせるとこの有り様は、いつも酒量をわきまえた飲み方をする土方には珍しいこと、らしい。真選組で飲むときも普段は控え目に切り上げ、酔いつぶれるのは万事屋の連中とかち合って飲み比べなど始めたときだけのような印象ではある。なのに、回を重ねているはずの二人の酒宴でも自制をきかせているなど。沖田くんがいるからかなと銀時に笑われて、少し複雑だ。沖田と銀時が揃っていたら土方は安心して深酒ができるというのか。ずしりとした頭の重みに眉を寄せた。いっそこのまま置いて帰ってやろうか。
「土方くんは沖田くんが好きなんだなァ」
 鬱々と渦巻く思いを察しているのかいないのか、のほほんと宣う銀時に、土方の懐から抜き出した財布を差し出し会計を任せる。
 面白くはないが、満更悪い気もしない。
 形容し難い思いはぐちゃぐちゃと蟠り、帰された財布が飲み代だけを使ったにしてはとても軽くなっていることに突っ込む気にもならない。土方の懐へ無造作に財布を戻す折に手の甲を掠めた素肌の温かさと内側から響く拍動に脊髄を不穏なものが舐める。
 この男を、沖田しか見えないようにして閉じ込めてしまいたい。でもそんな狭い世界に生きる土方は魅力的でないとも思うから、時々全力でじゃれつくくらいで許してやっている。
 近藤と沖田と土方がいて、ぽつぽつ道場に集い近藤を慕う者がいて、おねーちゃんが笑っている絆が全てだった頃は幸せだったのに。


2021.5.23.永


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あきゅろす。
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