SILVER

 土方に友人ができた。普段は死んだ魚の目をした、それでいていざとなるととても強い型破りの男だ。酒を酌み交わし楽しそうに笑い合っていたりする。元来なかなか気が合うらしく、待ち合わせた訳でもないのに街でやたらと会いまくるなど選ぶ行動が似通っている証拠は前からあったのだから、きっかけさえあれば仲良くならないはずがない。一度諸々の心の壁が破れてしまうと土方は、沖田を放置して万事屋と飲みに行ったりなどもするようになった。
 別に、構いはしないのだ。土方には土方の人間関係があり、沖田にもそれはある。共に江戸に来た仕事仲間で、たまにセックスするくらいの関係しかない沖田が、土方の友人付き合いに口を出す権利はない。
「土方ぁ。俺も行きまさァ」
 止める権利はないと自覚しているから、一緒に行くことにした。
 仕事が終わるといそいそ単衣に着替えた土方が、きっと万事屋と飲みに行くのだろうと見当をつけて、急いで沖田も着物になって逃さぬように袖口を掴む。
「──俺は私用で出掛けるんだが」
「俺も私用でアンタについていきまさァ」
「──てめェがいたら美味い酒が不味くなりそうなんだが」
 これ以上なく歯に衣着せない表現で断ったくせに、沖田が土方の背を押すようにして強引に屯所から連れ出し、街路でぴたりと隣を歩き始めると彼はもう何も言わなかった。


2021.5.5.永


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あきゅろす。
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