SILVER
初恋(R18)
 これ以上はないほどに焦れているにも拘わらず、強請るような言葉を漏らすのは矜持がまだ許さぬのか、涙の膜の張った瞳で強く睨まれた。
 言葉で表現しない代わりに瞳も挙措も雄弁で、だからこそ沖田が焦らしたくなるのをわかっているのかいないのか土方はその下唇をぎりと噛み締めた。それを解かせようと唇を重ね、ゆっくりと啄む。下唇に食い込む歯列を舌でなぞり、掌を腰へ滑らせた。
 隊服に比べ余程ガードの甘い単衣を着流した下肢へ手を這わせ、既に熱を保ちそそり立つひじかたを躱してその周をゆっくりなぞる。避けようとしても手にぶつかる熱さに息が乱れた。
 土方が確かに高揚している事実に息が乱れ、小さく胸を喘がせる。土方と舌を絡ませ合い、飲み込みきれない唾液が唇の端から零れ落ちた。
 眉を寄せた土方が無造作におきたを鷲掴む。ぎんぎんにいきり立つ熱が彼の手の中でぴくぴく跳ね、たまらず呻くような声が漏れる。ふ、と笑みを孕んだ呼気が接吻を通して沖田の口まで滑り込む。
 乱暴に口付けを振り解き小さく舌を打った。
「何が面白ェんでィ」
「てめェだってもうギンギンじゃねーか」
 揶揄する口調はさほどの余裕を保ってはいなかった。指先がびんびん震えるくらいに高鳴る拍動に後押しされ、帯の内側を通ってひじかたを掴む。下帯をしっかりと押し上げる熱の確かさに喉を鳴らし、耳朶に唇を寄せた。
「人のこと言えやしねーじゃねェですかィ、ねェ、副長」
「っ…今、変な呼び方すんな──」
 ぎり、と奥歯を食いしばるのに溜飲を下げ、ゆるゆると扱いてやるとおきたにも後ろ手に不器用な刺激が与えられる。だが、沖田が土方の耳朶に甘く歯を当て、下帯を緩めて直に握り込んでやるとそのささやかな煽りも曖昧に途切れた。
「名前で呼んでほしいんですかィ。しょうがねェなァ──土方さん」
「…ん、なんじゃ──ねェ…っ…」
 言葉では否定したくせに、沖田の手の中でひじかたがとろりと透明な蜜を吐き出した。滑りの助けを借りて扱き上げ、わざと外耳を舐って濡れた音を立てる。土方のぎゅっと閉ざした眦に透明な雫が滲んだ。
 胡座を崩して沖田に凭れかかり、肩に後頭部を擦り付けてくる。小さく肩を上下させ、上擦る息を吐いた。
 さっきよりずっと無防備になった最奥へ、先走りの滑りを帯びた掌を這わせる。ひやりとした玉を押しのけ探り当てた入口は、小さく戦慄くように震えた。
 その先を既に知っている体の高ぶりをこの上なくありありと感じ、小さく喉が鳴る。そしてその先を知っているのは土方だけではない。沖田もまた、この内のいくら貪っても足りぬような熱さも、受け止めてくれる柔らかさも熟知している。
 誘うように戦慄く内部をありありと想起しながらひくつくそこへ指先を埋め込んだ。吸い付いてくるような反応をいなして更に深く、根元まで差し入れてぐるりと確かめるようになぞる。土方の腹筋が小さく震えた。
「──総悟…」
 上擦る声は、沖田の行為を悦んでいると如実に伝えていた。
 この男が、ミツバが愛したこの男がこんな風に乱れるなど、きっと沖田以外の誰も知りはしない。姉の手を取らなかった土方に対する憤りも、抱かれてくれる愛しさも、こうして側にいられる喜びも、何もかもが全て混ざり合って沖田の心をぐちゃぐちゃに乱す。


2020.6.8.永


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