SILVER
若竹
「バレンタインはな! 野蛮な風習だ!」
 すまいるで、志村妙が恥じらいながらチョコレートを渡す代わりに有り金も通帳の金も全て奪われた近藤を迎えに行った土方は、後部座席で喚き続けるパンツ一丁の男に生返事で応じ、ネオンの輝くかぶき町をパトカーで走る。
 色んな文化を取り込む日本では昨今、様々な祭りが増えた。どんなことにかこつけてでも騒ぎたいのは、要するにそれだけ日頃の生活で鬱憤を抱えているからかもしれない。
「悪ィ、煙草吸うぜ」
 軽く断ると赤信号の隙に素早く火を付ける。さっきまでぎゃーぎゃー喚いていたくせに寝入ってしまったか、近藤の返事はない。
「まァ…ロクでもねェとは思うぜ」
 胸ポケットに入れた箱がいやに重い。


2016.7.8.永


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