SILVER
幕(R18)
 ようやっと沸き起こる衝動を鎮めたときには全身ドロドロのベタベタ、太陽は疾うに西の空へ沈んでいた。
 土方は重怠い腰を捩り沖田から身を離す。幾度ぶんであろうか、生殖に使われず無駄に放たれた子種がどろりと後腔から零れ落ちた。
 体の節々も、ひじかたも胸の飾りも疼くように痛む。
 どこか後悔に似たものが胸を過ぎる。
 仕事を放り出して、こんなことに励んでしまった──しかし、こんなにも彼に餓えてしまったのもまた、土方を追い立てる仕事のせいだ。
 沖田は無造作に土方の顎を掴み、唇を合わせてきた。先ほどまでの獣じみた情熱はなりをひそめ、柔らかく慰撫するように辿る舌に、土方は小さく息を漏らし舌を絡ませた。
「──発情期は終わっちまったんですかィ」
「…獣じゃあるめェし──」
 互いの声音は気だるく掠れていて、どちらからともなく笑みが零れた。
 一風呂浴びて仕事にかかろうと思うのに、何ともつかぬ液体にまみれた裸体を寄り添わせていたいなどどうかしている。抗い難い欲の波に揉まれてなお、未だ平静を取り戻せていないのだろうか。沖田もまた、常のような軽い悪態もつかずその熱い唇を土方の顔面に穏やかに触れさせるから余計に離れ難い。しかも、色々と酷使してしまったせいか、眠い。
 彼の下で幾度か瞬きを重ねるほどに、睡魔が迫ってくる。
「──おやすみなせェ」
 それは沖田も同じであったらしい。上着を自分の背にかけぽつりと呟き、欠伸をひとつ。首元に擦りよるように額を乗せ、目を閉じてしまった。
「俺ァ、寝てる場合じゃ…」
 ぼんやりした反論も皆まで聞かず、規則正しい寝息が絡み付いてくる。
 土方は深い息を吐いて、目を閉じた。
 沖田の体温と香りに執拗なまでに包まれ落ちた微睡みは、ベタつく不快感と裏腹にまるで桃源郷にでも誘われるような至福だった。
 快楽も、温もりも、命すら賭けるような遊び相手も全てに対応してくれる沖田は、理想の存在とやらであるのだろう。当人には決して告げられないけれど。
 ──もう少し、だけ。仕事を忘れ二人で穏やかな空気にたゆたっていたい。


2014.7.8.永


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