SILVER
32(R12)
 倉の重い扉が乱暴に開かれる音に、沖田は山崎の胸倉を掴んだままそちらへ視線を投げる。両手足の筋を限界まで引き伸ばされた山崎はぷるぷる震え、声も出ない有り様だ。
 肌の色が蛍光ピンクでない子飼いの哀れな姿に呆然とする土方に、沖田は悪びれず口角を吊り上げた。
「ちゃんと加減はしてやすぜィ」
「え…いや、加減っつうかお前」
 動揺に硬直した彼に歩み寄り、胸元を軽く押して外へ追いやる。
「問題ありやせん。知ってることも知らねーこともみんな吐かせやす」
 いや知らねーことは吐けねーだろ、などと遅ればせながら騒ぎ立てる彼を黙殺して内側から鍵をかけた。
 瞬間。
 背筋の粟立つ気配に沖田は口の片端を歪める。
「ようやくお出ましかィ」
 振り返ると、パッションピンクに輝く瞳をした山崎がいた。彼は不敵な笑みをその頬に掃く。
 沖田は左手を刀の柄へ無造作に乗せ、彼の元へ一歩一歩戻る。
「丸腰相手にそれは、買いかぶり過ぎではないか」
 怯えた様子もない声に、沖田は片眉を持ち上げた。
「へェ…ちゃんと、喋れるのかィ」
 声質は普段の彼と変わらない。だが愛すべき監察方筆頭山崎退像を裏切った彼は、両手足を拘束した鎖をちゃらちゃら鳴らし、声を立てて笑った。
「体が、覚えておるからな」


2014.5.5.永


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