SILVER
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昼下がり、土方はいよいよ退屈していた。
見張りは山崎一人、首根っこを引っつかみたいのに彼は決して捕まらぬ距離を保っている。
この部屋で自由に過ごして待っていろといわれた部屋には、攘夷思想の素晴らしさを謳った発禁本が溢れていた。時世が嘆かわしいという桂の思いもわからぬではないが、だからこそさっさと帰りたい。攘夷党を一網打尽にすることすら放り出し山崎を引き摺って帰りたい。
山崎を見限ることも考えぬではないが、彼は真選組の密偵たる監察方の筆頭だ。彼の脳内に残された情報を攘夷党に奪われるわけにはいかない、山崎の自我も怪しい状態でその記憶がどの程度残っているのかは定かではないが。
土方は手持ち無沙汰に取った本を棚に戻し、鞘ごと腰の物を抜いた。充分に距離を取った山崎の肩がぴくりと震える。黙殺して室内で愛刀を握り素振りを始めた。
そうそう敵の副長に情報を見せぬのは当然だろうが、退屈過ぎていけない。
2014.5.5.永
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