SILVER
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 篠原と最終的な詰めの打ち合わせをして、彼を送り出す。少々顔を弄って変装した彼は、憂国の志士の卵として攘夷志士採用試験を受けるのだそうだ。
 ここまできてしまえばもう部下を信じ任せるしかない。こんな仕事を日常的にこなすのが副長ならば自分は確かに副長向きではないと思う。そんなこと決して認めたくはないけれど。
 篠原の出発した後どうにも落ち着かず巡回に出たものの、平和な風景は意識に入らない。それではと屯所に戻り暇そうな隊士を道場へ引きずり込んだ。
 憂さ晴らしのように鍛えてやり、ふと思う。運動をして少しく冷えた思考回路は、いつしか沖田を土方と似た行動に走らせていたらしいと気付いてしまった。その瞬間なにやら空しくなって街へ再度出向いた。
 子供達に小突かれつつ寺子屋から出てきた少年の前に立ちはだかる。
「あ…」
 蜘蛛の子を散らすように逃げ去る悪ガキ達と違い彼は、真っ直ぐ沖田を見上げ何かを察したように頷いた。
「来ると思ってたよ」


2014.5.5.永


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