SILVER
20
「んー…しかしなァ──」
「筆頭のところへですか? 行かせてください、ヘマはしませんから」
 近藤の言葉を遮り直属の上司より更に地味な男が表情を引き締める。
「しかし…ザキの自我がどの程度戻っとるかもわからんのに、シノじゃ顔でザキにバレちまうだろう」
「顔は、変えていきます」
「しかし──」
 元々頭の良い方でない近藤は、口の回る監察方に反論を見つけられず隊長連の方へ視線を泳がせた。
 これが最良の策でないことくらいわかっている。土方が上手く立ち回れば、桂一派を一網打尽にできる可能性だって今はあるのだ──それ以上に危険の方が大きいが──真選組の頭脳の策を台無しにしてしまうかもしれない。だが。
「シノがダメなら、俺がシノに顔変えさせて行ってもいいですかィ」
「なっ…それなら、俺が」
 譲歩案は原田を筆頭に隊長連中の自薦に埋もれた。喧々囂々響く皆の自己主張に、ついに近藤が大きく頷く。
「わかった! ──シノ。無理はするなよ」
「もちろんです」
 大将に頷き返す篠原に説得力などあろうはずもない。だが、潜入捜査ともなれば監察方が最も手慣れているのも確かだ。彼らの直属の上司が近藤でなく土方である理由を改めて痛感しつつ、朝会はそれぞれに打ち合わせを重ねながら閉会した。


2014.5.5.永


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