SILVER
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 どうにもこうにもサマにならぬ報告をしても、近藤は沖田を責めなかった。とにかく沖田と隊士二人が無事に帰り良かったと言ってくれた。
 だが、いやだからこそ互いの胸中に過ぎるものは手に取るように分かり、彼に指摘されずとも沖田の中で自ら蟠る。
 あんな、仕事に託つけ喧嘩を楽しんでいるような男、何だかんだで気が短く瞳孔の開きやすい男。潜入捜査──いや、正体はバレているのだから通常のそれとはまた異なる気もするが、敵中に身を置き腹心の部下を質に取られた状態でうまく立ち回れるだろうか。桂のあの調子では狙いは土方の命ではないだろうが、なんといっても副長だ。バカではないがだからこそ組にとって価値の大きな脅迫材料になりうる。
 そして個人的な問題だ。
 まだ手は出せていないが、アレは沖田のものなのだ。その件は近藤にダダを捏ねてみせることすらできなかったが、アレは沖田のものなのに。桂に先に全て奪われたなら腹立たしいなんてモンじゃない。
 悶々とする夜を明かし、仕事をサボって灯りの落ちたかまっ娘クラブをもう一度覗きに行く。しかし、登校しようとする少年と鬼子母神がごときママしかいないそこには、桂の手がかりは残されていなかった。


2014.5.5.永


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