SILVER
13
 土方と連れ立って桂とやり合った民家に向かうも、そこは当然のごとく蛻の殻だった。何か証拠は残っていないかと家捜ししたが手掛かりはない。戸籍上の持ち主は数年前から行方知れずだ。
 彼らの足取りを掴めぬままラブホテルに回り出入り口の防犯カメラを見せさせたが、山崎を後ろ手に拘束し主導権を奪われず歩く一番隊隊士二人が映っていただけだった。
 周囲に視線を油断なく巡らせネオンに灯の点りはじめた如何わしい通りを相前後して歩く。
 と、禍々しい店からするりと美女が現れ土方の袖を引いた。
「貴様…」
 ものすごい美人であるのに、その声はまるで男のようだ──と、いうか。
「…桂?」
 自分で自分の言葉が信じられぬように土方が数度瞬く。沖田は土方の腕に腕を絡める美人を押しのけ二人の間へ割り込んだ。
「てめェ…ザキをどこへやったんでィ」
 化粧が濃いが、そのせいで更に美人に化けて見えるが、瞳の強さはやはり男だ。桂はその秀麗な眉を顰め、背で緩く纏めた黒髪を軽くかきあげた。
「その話は店でしようではないか。ドンペリを入れてくれるであろう、お兄さん達?」
 ふざけるな、と言おうとした口を土方の手が塞ぐ。
「話は署で聞かせてもらおうじゃねェか」
「俺はヅラ子と申す者。全うに仕事をしているだけだ。貴様達は何の罪もない一般人にまで手荒な真似をする野蛮人種か」
 土方の頬がひくひく引きつる。沸点も高くはなく、戦略に頭を使えても基本的に学問にはさほど通じていないヤクザ者だ。
 これはキレるなと沖田が思った、瞬間。
 土方は大きく肩で息をして深呼吸を繰り返し、ややあって大きくかぶりを振った。
「案内しろ、‘店’とやらに行ってやろうじゃねーか」


2014.5.5.永


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