SILVER
7(R12)
 ピンク色に染まって数時間。意識が朦朧とし、ヤバい、と思うも闇に飲まれた。
 そうして、気が付いたら。
 SMのプレイルームかはたまた拷問部屋か。どちらにせよ好ましくない部屋に着の身着のまま拘束されていた。
 はじめに浮かんだのは、何かヘマを打って敵の手に落ちたであろう可能性だ。
 しかし、斜め前の椅子に腰掛けた沖田が視界に入り、その可能性は即座に葬られた。氷の如く冷えた目をした彼は、つかつかと山崎に寄って来て顎を掬い上げた。
「…隊長?」
 何故だか舌が痺れたようになり、上手く声が出ない。
 暫し無言で山崎の瞳を見据えた彼は、小さく息を吐いて手を離した。ふ、と空気が撓み無表情に肩を竦める。
「覚えてるかィ」
「は? ──何かありましたか」
「この俺に刃向けておきながら、なんにも覚えちゃいねーってかィ。そりゃァ都合のいい頭だねィ」
 あまりにも予想外なことを仲間に言われると、様々な非常事態に慣れたつもりでいても硬直してしまうらしい。言われた意味を咀嚼するのに、たっぷり数十秒はかかった。
「──へ? え、ええ? 俺が隊長に? そんなバカな」
 真選組随一の剣の使い手に文字通り刃向かうなど、考えたこともない。彼はこんな冗談を言うような人──ではあるけれど。
 がっちがちに拘束された山崎を見据える沖田の瞳はマジだった。


2013.10.22.永


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