SILVER
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 翌朝、屯所に時計のような音を立てる小包が送られてきた。受け取った隊士に見せられ、夜勤の最高責任者だった沖田は首を傾げる。
 宛先は土方になっていた。差出人の名はない。
 訳もなく気に入らず、屯所の池に放り込むと、直後爆音と共に背より高い水柱が立った。すぐに沈静した池の水は、真っピンクに染まっていた。
 …わけがわからない。
 朝一の騒ぎに土方と近藤が飛び出してくる。二人とも夜着姿で、髪のセットも間に合わなかったらしく近藤の前髪は下ろされていて、常より幼い印象だ。
「…何があった?」
「うわァ…すげェ、ピンクだ!」
 不機嫌に沖田を睨む土方と、池の縁から身を乗り出し素直に感動している近藤は見事なまでに両極端だ。
「朝一で届いた荷物が爆発しやがりやして」
「それでどうして池に被害…いや、それより怪我人は?」
「怪我人が出ねーように池の中で爆発させたんでさァ──幸いウチにゃァ池でペットを飼う酔狂な輩はいなかったはずですからねィ」
 だから、と屁理屈捏ね回し自分の正当性を主張しようとした瞬間、響いた素っ頓狂な声にぎくりと振り返った。
「ああッ!!」
「──どうした、近藤さん」
「俺がお妙さんとのデート妄想して掬ってきた金魚が…っ!!」
 刹那、罪悪感が背筋を冷やす。
「ピンクになっちまった!!」
 長めの前髪が水面を掠めるほどに身を乗り出し、近藤がすげェすげェと騒ぐ。彼の肩越しに覗いた池の中、身を翻す小さな金魚はなるほど鮮やかな蛍光ピンクだ。
 ちらりと横目で窺った近藤から怒りは感じられず、小さく息をつく。安堵する間もなく土方の手が肩にかかった。
「経緯をきちんと報告してもらおうか」


2013.8.16.永


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