SILVER

「おねーちゃん…?」
 すっかり眠ってしまったと思っていた弟の幼い声に、はっと振り返る。咄嗟に手元の毛糸を隠そうとしたが間に合わず、とてとてと寄ってきた彼は眠い目を瞬きながら、そっとミツバの手元を覗き込んだ。
「これ、何でェ…?」
 沖田は、‘彼’の瞳の色をした毛糸にその指先で触れ、首を傾げた。
 まだ形をなさない毛糸玉が、編みものの本の上に転がる。
「──マフラーを作ろうと思って。近頃、寒くなってきたでしょう」
 ふぅん、と頷いた弟は、大きな瞳で姉を見上げた。
「誰の?」
 どきりと跳ね上がる鼓動を誤魔化すように、ミツバはそっと微笑んだ。
「──そーちゃんの、よ…」
「ホントに…?」
 全てを見透かすような、大きな瞳がミツバを見上げた。
 幼い弟に、ミツバはふわりと微笑みを向ける。
「きっと、そーちゃんに似合うと思うの。はじめてだから、うまくできないかもしれないけれど…」
 そっと彼の首筋にあてがった青色は、弟にもよく似合った。いっそ、皮肉なほどに。


2013.5.5.永


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