SILVER
5(R15、定土要素有)
 この状態が、惚れられているというのなら。
 沖田はポケットに手を突っ込んで土方の半歩右をのんびり歩き、秋晴れの空を見上げる。
 甘い言葉の一つでも囁けば、小憎らしい男に戻る…遊びにもなりはしない。
 ふと響いた轟音に飛び退ると、見覚えのある犬が突っ込んできた。それは急停止して、ギリギリで突撃を避けた土方の肩にがしりと両前足で飛びつく。
「定春〜っ! そんなの食べちゃお腹壊すヨ!」
 一拍遅れて突っ込んできたチャイナ服の娘の声も聞こえぬように定春は土方に伸し掛かり──
 沖田が愛刀を抜き放つと、横から飛び蹴りがくる。身を捻って躱した。
「定春に何するネ!」
「お前の犬こそ何してんでィ!!」
 冗談ではない、まだ何もしていないのに。
 どう見ても繁殖に励んでいる犬に斬り掛かりたいのに、神楽が邪魔をして上手くいかない。
 土方は藻掻いてはいるが、あの体重をがっちりと乗せられまだマウントポジションを与えたままだ。
 いいからタマァ蹴り上げなせェ、と思う。だがしかし、飼い主はそうは考えていないらしい。
「あれは違うネ! 自分の方がエライって言いたいだけだから、飼い主にはさせちゃいけないってこないだテレビでいってたヨ!」
「他人にすんなァいいのかィ」
「マヨラよりは定春の方がエラいヨ!」
 果たしてそうだろうか、と彼らを窺う。
 黒い隊服と白い犬の狭間にちらりと見えた逸物は、ふわふわした包皮が捲れ、赤い本体がしっかりと露出していた。雄犬はそれを我が物顔に土方の尻に擦りつけ──


2012.6.10.永


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