SILVER
マヨの黒焼き
 本来ならば逮捕されてもおかしくない暴挙を成し遂げた万事屋の主人は、一瞬意識を遠くした当の被害者が、大事にするまでもない、早く追い払えと言うので呆気なく命拾いした──が、解放された直後に一番隊隊長の私室へ引き摺り込まれた。
「──旦那…フクチョーに何してやがんですかィ?」
 斬りかかりこそしないがそうしかねない沖田を前に、銀時はへらりと茶菓子を摘む。
「──あいつに妙なモン飲ませていいなァ、俺だけなんですがねィ」
「多串君は、主食が既に妙でしょ。それに俺は飲ませてないよ、かけただけ…まぁ少しは飲んだかもしれないけど」
「そんな問題じゃありやせん」
 遠慮もなく茶菓子をぱくぱく食らい、沖田の皿にまで手を出した銀時は飄々と紡いだ。
「総一郎君が言ってた件──まァ、俺もあそこまでする気はなかったんだけど。多串君が可愛かったから」
 銀時は、沖田の額にぴしりと浮かんだ青筋を面白そうに流し見、普段縁遠いのだろう値の張る甘味に舌鼓を打つ。
「俺ァ…なんか、依頼しやしたか。あいにく憶えがねェんですが」
「酔って銀さんに一晩中グチってただけだね…まァ、のる気はなかったんだ、けど坂──古い仲間が色々とくれたもんだから」
「何を、ですかィ」
 自然こわばる沖田の声にも、銀時はやはり動じない。
「ん〜…惚れ薬」


2012.5.13.永


2/14ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!