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小説
【P】Good good morning!(ジャクギル子←オズ?)

ご注意!
ギル子で学パロ ジャクギル←オズとかです。








Good good morning!










 目蓋の上から感じる光源に、重たい目蓋をゆるゆると押し上げた先に映った既に見慣れることになってしまった壁時計の針を確認した瞬間、ギルバートの頭は一瞬で覚醒する事となった。
 慌てて起きあがろうと身動ぐが、肩から胸に掛けて何かが乗っており、ギルバートは結果的に起き上がることができない。
 横向きになって眠っていた自分を、背後から抱き寄せるように回された腕を外さない限り、ギルバートはベッドから出ることはできないのだ。自分の身体をすっかり抱え込んでくれている腕の存在に、昨夜のことを思い出し、ギルバートは顔を紅潮させる羽目になる。
 のし掛かられているせいだけではない身体の倦怠感。しかも、結果的には無断外泊までしてしまっている。

「…とにかく、起きないと…」

 いつまでもこのままだと学校に遅刻するのは必至、それに時間が許せばシャワーも浴びたい。
 ギルバートは自分の身体を抱え込んでいる腕をできるだけ静かに外すと、相手の寝息が乱れていない事を確認したところでベッドから降りた。
 どちらにしろ相手も起こさないといけないと思うものの、気持ち良さげな表情で寝息をこぼすその表情に、ギルバートは頬にキスを落とすだけでバスルームへと向かう。その際、ベッドの下に落とされたままの自分のシャツや下着を拾い上げることも忘れなかった。
 シャワーブースに入り、コックを開けば程なくして熱い湯が降り注ぐ。昨夜はシャワーを浴びる間もなくベッドに雪崩れ込み、そしてそのまま眠ってしまったのは我ながら失態だ。それでも、ベッドに辿り着けたこと事態、奇跡だったのかもしれないと、ギルバートは溜息を吐く。
 ここのところ生徒会業務が忙しく、プライベートなどないも同然で、それが漸くひと段落したとなって、たがが外れたらしい相手の勢いに押されてしまってこの有様とは、はっきり言って笑えない。どちらにしろいつだってギルバートは相手のわがままには逆らえないわけで、甘すぎるギルバートの自業自得と言えば、それまでだった。
 ざっと全身を洗い終え、ギルバートはブースを出てバスタオルを身体に巻き付ける。全身の水分を拭き取り下着を身につけたところで、ギルバートは身を固まらせた。

「…私を独りぼっちにするなんて酷いな、と思ったけど、朝から刺激的な恰好だね…」

 華奢なギルバートの腰へと腕が回り、髪から流れ落ちる水滴が残る首筋へと熱い唇が寄せられる。

「…っっ。ジャック…ッ」

 ひぅっと悲鳴を上げる可愛い恋人の反応に、ジャックは口角を引き上げながら下着姿の恋人の項へとキスの唇を滑らせていけば、

「…時間っっ…」

 半べそ混じりのギルバートの声音が飛んだ。
 その言葉に、漸くジャックは自室の壁掛けへと視線を向ければ、始業まで1時間を切っている。
 折角、久し振りに恋人との時間を持てたというのに、全く持って詰まらない。

「…休んじゃおっか…?」

 自分の腕の中で身を震わせる恋人から唇を離し、多分却下されるだろう案を提示してみるが、

「駄目に決まってるだろう!?」

 予想通りの答えに、ジャックは苦笑を浮かべるしかなかった。顔を朱に染め涙を潤ませた双眸で睨まれても、抑止力になるどころか、煽られるだけなのだが、恋人に自覚はない。

「どうしても…?」
「生徒会長と副会長がズル休みなんて、示しがつかないだろう!?」

 駄目だろうと判っていても食い下がってみるが、当然却下されてしまう。確かにごもっともな理由に、ジャックは名残惜しげにギルバートの身体を解放した。そうして、恋人の襟足についた刻印を見つけ、心の中で舌を出す。
 一応生徒会執行部役員という立場から、自分達の関係は知られないようにしているため、ギルバートはジャックが自分の身体にその痕跡を残すことを酷く嫌がるのだ。まぁ、見えるところ限定のため、見えないところにすればいいのだが、ジャックとしては納得がいかない。
 本人が無自覚なのだが、ギルバートに好意を寄せる人間は結構いる。その牽制のためにも所有印を残したいのだが、恋人を怒らせるのは本意ではないため、それなりにジャックも気を遣ってはいる。だが、昨夜は羽目を外しすぎたらしい。
 まぁ、本人の目には届かないところのため、良いだろうとジャックはベッドへと戻りながら床に脱ぎ捨てられているトラウザーに足を通した。その瞬間、

「あぁっ」

 バスルームから悲痛な恋人の声。

「ギルバート?」

 どうしたんだと、ジャックが慌ててバスルームに戻れば

「シャツ、皺皺で着れない…」

 途方に暮れた表情で制服のシャツを握りしめるギルバートに、ジャックは理性を総動員させて笑みを浮かべる苦行を強いられることになっていた。
 生徒会室で事に及びそうになっていたところを強引に押し留められ、男子寮にある自分の部屋の扉を開けた瞬間、あっさり限界がきて、ジャックはギルバートの唇を塞ぐことになっていた。
 そのまま押し倒しそうになっていたところだが、どうにかベッドに辿り着いた時には、ギルバートの身体を包むものは全て床の上だったのだ。行程から考えて、シャツが無事な訳もない。
 いい加減、着替えを置けばいいのにと思うのだが、寮則違反はできないと頑ななギルバートを口説き落とすことが未だ出来てはいなかった。

「私のを着ていくしかないね…」

 言いながらジャックは自分のシャツを取り出し、ギルバートに投げる。納得いかないと言った表情のまま、ギルバートはジャックのシャツへと袖を通した。

「…大きすぎる…」
「まさに、男のロマンってやつだね…?」

 不機嫌な表情を露わに、自分のシャツを身に纏い、膝上丈の裾から伸びるすらりとした白い脚は、眼福以外の何者でもない。これが自分のパジャマならば、申し分ないくらいだ。シャツの裾に隠れている形の良いお尻に手を伸ばしたいところだが、流石にそんな暴挙に出る事も出来ず、ジャックはギルバートの指先を隠してしまっている袖口を丁寧に折っていった。

「今日一日、我慢して…?」

 子供を宥めるように言えば、ギルバートは渋々と言った風に頷く。どちらにしろ、これ以外の選択はギルバートにはないのだ。
 漸く納得しただろうギルバートに、ジャックは笑みを浮かべるとワードロープから自分のシャツを取り出し、袖を通す。確かに真面目に急がないと遅刻してしまう時間だ。

「…あれ…?」

 床に放置されていたネクタイを拾い上げ、ジャックが襟へと通していると、再び困惑したようなギルバートの声音がジャックの耳へと届く。

「…どうしたんだい…?」
「…ん〜〜〜。タイが、ない…」

 男物のシャツのせいで胸元が大きく開いてしまうこともあり、ネクタイで何とかしようと思っていたギルバートだったのだが、室内の何処を探しても、自分のネクタイが出てこないのだ。

「タイ…?」
「あぁ…」

 制服の付属品が無くなるわけがない。だが、ジャックがなけなしの理性を総動員して昨夜の事を思い出していけば、生徒会室で恋人の身体を抱き寄せ、その唇を奪いながらギルバートの胸元から抜き取りそのまま適当に放り投げたことを思い出し、ジャックは一瞬天井を見上げると自分の襟へと回していたタイを抜き、そのまま恋人の襟へと通していった。

「…ジャック…?」
「とりあえず、私のをしておけば良いだろう…?男子は開襟でも良いしね…?」

 まさか、君のタイは自分が抜き取って生徒会室に放ってしまい、多分そのまま絶賛放置中です、とは言えず、ジャックは柔らかな笑みを浮かべるとそのままギルバートのタイを結んでいく。

「…う…ん…」

 恋人の長く器用な指先がタイを結んでいく様を魅入ってしまっていることに気づき、ギルバートはぎこちない仕草で頷くと、襟元からジャックの指が離れていくのを名残惜しく感じてしまっていることに気づき、慌てて首を横に振った。
 今は、一分一秒が、惜しい。
 大体の身支度が済んだところでギルバートは簡易キッチンへと向かうと、2つのマグにティーバッグを入れ冷蔵庫からミルクを出すと注ぎ込み、そのままレンジにつっこんだ。
 その間に、トースターへと食パンを入れてしまう。
 自分はともかく昨夜から殆ど胃に何も入れていないジャックをこのままにしておけば、空腹で倒れてしまうことは必至で、ギルバートは冷蔵庫からジャムとバターを取り出すと、ダイニングテーブルへと置いた。

「ジャック、準備は…?」
「…完了だよ」

 焦っているギルバートとは対照的にジャックはのんびりした様子でダイニングへとやってくる。その手元には二人分の鞄があり、それを認めてギルバートは目を細めた。

「トーストとミルクティだけだけど、入れちゃって…」

 さっさと座るようにと暗に伝えながら、ギルバートはトーストが焼き上がったことと即席のロイヤルミルクティーが出来たことを確認するとそれらをトレイに乗せてジャックの前に置く。

「…本当に、早業だね…」
「ジャック、髪!」

 トレイから自分用のマグを手に取った瞬間、恋人の背へと向けられたギルバートの瞳が、結びっぱなしで乱れに乱れまくった三つ編みを認め、思わずマグを取り落としそうになっていた。そうして、慌ててマグをテーブルに置くと、ベッドルームからブラシを取って、恋人の髪を解いていく。

「ギルバート…?」

 時間がないのに何やってるの?と言わんばかりに名を呼ばれ、ギルバートは眉間に皺を寄せたまま、問答無用でブラシを入れると、再び綺麗な金糸を編んでいった。

「そんなことより、ギルバートも何か入れなよ」

 別に髪なんかどんな形でも問題ないとジャックは訴えるが、ギルバートは聞く耳持たぬとばかりに黙々と手を動かす。外見とは裏腹にあまり自分の装いに頓着を持たないジャックに、我慢が出来ないのはいつだってギルバートの方なのだ。

「…はい、終了」

 ギルバートの好きにさせることにしてトーストをかじっていたジャックの耳に、呆れを含んだ恋人の言葉が届くと同時に、ジャックは己の肩口へと自分の食べ掛けのトーストを向ける。

「…朝は、入らないって…」
「そう言って、低血糖起こしたの、誰だい…?」

 あまり朝が強いとは言えないギルバートはこうしてジャックと朝を迎えたときに朝食を取らないことが応々にしてある。だが、それはギルバートに言わせてみれば半分以上ジャックのせいであり、普段はきちんと摂ってはいるのだ。だが、確かに先日、今朝と同じ状況で、授業中に低血糖を起こし倒れたのは記憶に新しい。それを言われてしまえば、ギルバートとしても反論は出来ず、渋々と言った風にギルバートはジャックから差し出されたトーストへと歯を立てた。
 甘い物好きのジャック好みにたっぷり塗られたベリージャムが口の中に広がり、ギルバートは僅かに頬を緩める。そんなギルバートの口端にジャムが付いたのを見つけたジャクは、いたずらっぽく目を煌めかせると、自分の肩へと置かれることになっていたギルバートの手首を取ると、その口端へと舌を伸ばす。

「ジャック…?」
「ジャムが、ついてるからさ…」

 咎めるように名を呼ばれ、ジャックは悪びれない笑みを浮かべるとギルバートの唇を奪い、そのまま手首を引いて自分の膝へと華奢な身体を乗せてしまった。

「…っ…」

 突然仕掛けられたキスに、ギルバートが抗議するように吐息を漏らすが、ジャックは構わずギルバートの柔らかな唇を割り、閉ざされた歯列へと舌を這わせていく。ギルバートのものなのか自分のものなのか、甘いベリーの芳香が、ジャックの鼻を突いていた。強情にも必死になって歯に力を入れている恋人に、ジャックは片眉を跳ね上げると、ぷるりと色づいたギルバートの下唇へと歯を立て、軽く吸い上げる。舌と歯の愛撫にジャックの手に捕まれたギルバートの手が、ジャックのシャツへと皺を作っていた。

「…っふぁ…っ」

 とうとう息が続かずに、薄く口を開くことになったギルバートは、結局ジャックへと口内を明け渡すこととなる。
 するりと入り込んだジャックの舌は、あっさりと恋人のソレを捕まえ絡みついた。
 静まり返った室内に、濡れた音だけが響く。
 朝と時間帯からは不似合いなその音に、ギルバートの顔は羞恥に染まっていった。

「…んっ…っっ…」

 重なる粘膜の暖かさに、ギルバートの意識が一瞬飛びそうになるが、寸でのところで堪えると、ジャックのシャツにすがりついていた手が、彼の胸元を叩く。
 こんな事をしている場合ではないのだ。
 流石にジャック自身もまずいと思ったのか、あっさりギルバートを解放する。

「っふ…ぅ…」

 唇が離れると同時に深く息を吸い込みながら自分を睨めつける恋人の潤んだ双眸に、ジャックは心の中で溜息を吐いていた。

「朝食じゃなくて、ギルバートを食べるんじゃ、駄目…?」

 この期に及んでの悪足掻きとしか言いようがない恋人のせりふに、ギルバートは自分の腰を掴むジャックの腕を両手で引き剥がす。

「駄目に決まってるだろ!?」

 自分の膝の腕から逃げ出そうとする恋人の華奢な身体を抱き締めると、ジャックはそのままギルバートの胸元へと頭を押しつけた。
 焦点の甘いとろりとした恋人の表情は、まさに食べごろと言ったところだ。それなのに、何故、我慢しなくてはいけないのか、と言うのがジャックの言い分だったりするのだが、自分達の立場や時間的要因からそんなことを口にすれば、どうなるかなど考えるまでもない。

「…ジャック…」

 本当は殴ってでも自分を引き剥がしたいと思っているだろうに、それでも自分を甘やかしてくれている恋人に、これ以上のわがままは良くないと、ジャックは必死の思いで離れると、そっとギルバートの身体を己の膝の上から下ろした。
 始業時間まで後10分。
 寮から校内までダッシュで5分。ここらが引き時だろう。

「…どーして、今日が土曜日じゃないんだろう…?」
「週末は、ゆっくりできるだろ…?」

 まるで幼い子供のような言葉を口にするジャックにギルバートは苦笑すると、ジャケットとジャックの分の鞄を手に取った。







「…遅いよ、ジャック。…ギルも一緒だったんだ…?」
「オズ!おはよう。どうしたんだい…?」

 クラスルームに着くと同時に弟に声を掛けられ、ジャックは足を止める。

「お迎え、頼んでたんだ。それで…?」

 ジャックに倣って足を止めたギルバートは、オズに笑顔を向けた。

「おはよう、オズ。元気そうだ」
「ギルも。兄がいつも迷惑を掛けてごめんね」
「で?どうしたの…?」

 自分に用があるというのに、ほったらかしで恋人と会話を交わす弟にジャックは焦れたように声を掛ける。

「そうだぞ、さっさとしろオズ」
「「アリス、おはよう」」
「久し振りだな、ギルバート、ジャック。早くこの馬鹿の話を聞いてやってくれ」

 淡々と言葉を紡ぐ黒髪の美少女の登場にギルバートとジャックは破顔した。

「辞書忘れたんだ。貸して…」
「辞書?あぁ、悪い。ザクスに貸したままだ」
「え〜〜〜ブレイクに…?」

 当てが外れたとばかりにガックリと肩を落とすオズにギルバートは苦笑を浮かべると、

「…俺のでも良いかな…?」
「むしろギルの方が嬉しい」

 直ぐに満面の笑みを浮かべるオズにギルバートは微笑を浮かべると、そのまま自分のロッカーへと向かう。
 そんなギルバートの後を追うように、ジャックも鞄を置きに室内へと入っていった。
 そんな2人の後ろ姿を見送りながらオズは僅かに眉を潜める。

「…どうしたのだ…?」
「ん〜〜〜、なんかギルの恰好、変じゃないかな…?」
「そうですね、シャツが大きめのようですね…」
「シャロンちゃん!」

 どうしてだろうと悩んでいるオズの背後からヒョコリとシャロンが顔を出し、オズは飛び上がるが

「やはり、な…」

 アリスは納得したとばかりにうんうんと頷きながら意味心な視線をシャロンへと視線を向けた。

「…どうして大きめのシャツなんか…」

 自分の視線の先、辞書を片手にジャックと共に戻ってくるギルバートを見つめるオズを横目にアリスとシャロンは顔を見合わせ、やれやれと溜息を吐く。

「待たせたな、オズ。これで良かったか…?」
「ありがとう、ギル」
「もう、忘れるんじゃないぞ」
「ジャックこそ、さっさとブレイクから返して貰いなよ」

 バイバイと手を振って自分達のクラスルームへと向かうオズ達を見送るとそのままジャックとギルバートも室内へと戻っていく。

「…しかし、何で気づかないんだろうな…?」
「本当ですわねぇ…」

 実際のところ、ジャックとギルバートの関係は彼らが巧妙に隠している事もあって、殆どの者は気づいていないだろう。だが、彼らに近しい者達は気づかざるを得ない。そもそもジャックはギルバートほど隠したがってはいないのだ。だと言うのに、ジャックの弟であるオズは全くと言う程気づかない。

「…恋は、盲目と言ったところでしょうねぇ…」

 振り返り様、ギルバートの襟足に刻まれた朱の刻印を認めてしまったシャロンは言いながら苦笑を浮かべる。
 そんなシャロンの言葉に同意するようにアリスは溜息を吐くが、そんな2人を余所にギルバートから借りた辞書を大事そうに抱え、オズは鼻歌交じりに2人の前を歩いていた。




FIN


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あきゅろす。
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