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小説
Scar (オズギル:R18)

Scar







「…っん……ッオ…ズ……っ」

 吐息と共に漏れる自分を呼ぶ声に、オズは口角を引き上げる。きっちり襟元まで締められたシャツのせいで、殆ど日に焼けることのない白い肌に唇を滑らせていけば、従者であり恋人でもあるギルバートの口からこぼれ落ちる甘い声音は、オズの耳を充分に楽しませてくれていた。

「……っは…ぁっっ……やっめっ…」

 肌理の細かい肌を堪能しながら、ある場所へとオズが唇を触れさせた瞬間、ギルバートの身体が跳ね、拒絶の言葉が漏れるが、オズはまるで気にする素振りを見せず、執拗にソコへと唇を滑らせていった。

「やっっ……」

 ビクビクと反応を返すギルバートをそのままに、オズは白い肌に刻まれた傷跡へと舌を這わせていく。

「……オ…ズッ……」

 薄くなったとは言え、決して消えることはないだろう己が付けた、傷。
 今更、何をしたところで消すことも癒すこともできないことは重々承知はしているが、それでも触れることを止めることなどオズには出来るわけもなかった。
 それに、

「…ココ、凄く敏感、だよね……」

 新しく皮膚が盛ったせいか、過敏とも言えるギルバートの反応に、ついついオズは懺悔の想いもあって執拗に触れてしまう。
 ギルバートにしてみれば、あまりオズに気に病んで欲しくないと言う思いと、酷く敏感な場所となってしまったソコに触れられたくないと言う思いから、抵抗してはみるのだが、結局のところ成功した試しはなかった。

「やっ……」

 しっとりと濡れたソコに指先を這わせていけば、ギルバートの表情が歪み、とうとう金色の双眸から涙がこぼれ落ちる。
 10年という歳月のおかげですっかり成長してしまったギルバートではあるものの、泣き顔は変わらないとオズは目を細めた。
 しょうがないことではあるものの、幼かった頃は自分の方が大きかったと言うのに、今では自分より遙かに大きくなってしまった従者の姿は、オズにとっては面白いものではない。時折、本当に目の前にいる存在が、自分の従者であるのか考えてしまうことがなくもなく、だが、こうして表情の一つ一つや仕草の一つ一つが、以前の彼のものと変わらないものであり、ソレを確認することでオズは安心することになっていた。
 その一つであるギルバートの泣き顔であるが、行為の最中は艶が入り、嗜虐心が刺激される。

「…何…?俺に触られるのが、嫌……?」

 涙の皮膜に包まれた双眸が上目遣い自分を見つめるのに、オズは敢えて寂しげな表情を浮かべ、小首を傾げて見せた。
 瞬間、ギルバートの金の瞳が見開かれ、次の瞬間顔が朱に染まると同時にギルバートの視線がオズから逸らされる。

「……ゃ……じゃ…な…い……」

 絞り出すように紡がれた言葉は、掠れた声であるものの、確かにオズの耳に届いた。

「ん……?何……?」

 それでも更に追い詰めてしまいたくて、オズは聞こえない振りで再度言葉を強請る。
 いつだって自分を第一に考えてくれているギルバートではあるものの、それだけでは満足できない。
 態度だけではない言葉も全て、自分に雁字搦めにしておきたいのだ。
 ギルバートが逆らえない柔らかな笑みと眼差しで促せば、羞恥に震える唇が、それでもオズの求める言葉を紡ぐ。

「嫌じゃ、ない……」

 言って、唇を噛みしめてしまったギルバートに、オズは満足そうな笑みを浮かべると柔らかな癖毛が上からギルバートの額へとキスの唇を落とした。








「…ひぁっ……あっ……んっ……」

 触れられる場所から熱を灯されていく感覚に、ギルバートは己の胸元に顔を埋めているオズの金糸へと指先を絡める羽目になっていた。既に立ち上がった胸の突起を舌先で潰される刺激に、腰が震えてしまうのを止める事が出来ない。

「あぁっ……ん…」

 ちゅっと音を立てて吸い上げられ、抑える事のできない嬌声が口をついた。触れ合うオズの体温に、気恥ずかしさと安堵感がギルバートを支配する。

「やっ……あぁっ……ん…」

 自分より高い体温のオズの指先が肢体を滑る度に、ゾクリとした感覚が身体を震わせる。体内に篭る熱を解放して欲しくて、ギルバートはむずがるように身を捩じらせた。

「ギル……」

 甘い声音に名を呼ばれ眼を開ければ、ギルバートの視界にオズの顔が広がる。いつからそんな艶めいた声を出すようになったのかと、問い質したいところなのに、徐々に近づくその顔を見詰めるばかりのうちに、ギルバートの唇へと温もりが落とされた。
 歯列を舐められ、ぬるりと舌が口内へと入り込む。彼の指先よりも熱いソレを求めるようにギルバートは無意識の内に眼を閉じ、己の舌を伸ばしていた。

「…んっ……っふ……ぅ…」

 耳に届く水音に、ギルバートの顔が朱に染まるのを薄目で楽しみながら、オズはギルバートの耳元へと指を滑らせる。
 乱れてしまっている柔らかな猫っ毛を梳いてやりながら、耳裏を擽ればピクリとギルバートの肩が震えた。
 小さくギルバートの喉が鳴るのを合図に、オズはギルバートから離れる。

「…ん……」

 互いの唇に繋がる銀糸に、オズは口角を引き上げながら、気だるげに双眸を閉じているギルバートの顔を見詰めていた。

「…ギル……」

 名を呼べば、緩慢な動作で震える目蓋が押し上げられ、涙の皮膜に包まれた金が姿を現すこの瞬間が、何よりオズのお気に入りだった。
 誰も見ることのできない、唯一オズのみが知っているギルバートの瞳の美しさ。
 焦点の甘い視線がオズを捕らえ、出会った時から変わらない自分だけに向けられる柔らかな微笑みに、オズはその額へとキスを落とすと、既に形を変えているギルバート自身へと指を絡めた。

「っあっ……んっ……やっ…」

 白く細い項に唇を落とし軽く吸い上げ、己の印を刻み付けていく。
 朱に浮き上がる痕に舌を這わせながら、このまま永遠に残れば良いのにと馬鹿な事を考え、オズは自嘲の笑みを浮かべた。
 ゆるゆるとオズへと廻されたギルバートの繊細な指先は、決してオズを傷つけまいと、爪が立てられる事はない。
 キスの唇を下へと降ろしていきながら、今更ながらどれほど己がギルバートに許されているかをオズは自覚する羽目になっていた。

「あぁっ…やっ…それっ…やだって……」

 先走りの蜜を零すギルバートへと唇を触れさせれば、ギルバートの唇から悲鳴が零れる。
 ソレを聞こえぬ振りで、オズは口内へとギルバートを含んだ。
 自身に絡まる熱に、ギルバートの腰がフルフルと震える。舌を使って追い詰めていけば、ギルバートの指先がオズの髪の毛へと絡んだ。

「あっあっ……あぁっ……ん…」

 ギルバートの力ない抵抗をそのままに吸い上げれば、オズの口内へとギルバートの欲が放たれる。
 ビクビクと震えるギルバートの肢体からくたりと力が抜けるのを待って、オズはギルバートから離れると、そのままコクリと喉を鳴らした。

「…はっ……っあ……」

 眼を閉じ荒い呼吸を繰り返すギルバートの目蓋へとキスの唇を落とせば、その刺激にギルバートの眼がうっすらと開く。
 何処か非難がましいギルバートの視線にオズが口角を引き上げれば、のろのろとギルバートの腕が上げられ、華奢な指先がオズの口端に触れた。

「…馬鹿……」

 拗ねた口調が酷く甘い。
 ギルバートの指先が掬い取った白濁液にオズが笑みを浮かべたまま舌を伸ばすと、ギルバートの目許に朱が散った。
 音を立ててギルバートの指先から唇を離し、オズは己の指先をギルバートの下唇へと這わせる。
 カツリと爪がエナメル質に当たる音に、ギルバートは再び眼を閉じると、オズのいとする通りに薄く唇を開いた。
 入り込んでくるオズの冷たい指に暖を与えるようにギルバートは舌を絡めていく。いつしか夢中になって指を舐め上げているギルバートの口端から伝う銀糸へとオズは唇を寄せた。

「…ギル…もういいよ……」

 よくできました、と言うように耳元へと落とされるいつもより低めのオズの声音に、ギルバートの腰が無意識のうちに震える。

「…んっ……」

 ピチャリと濡れた音と共に、ギルバートの唇からオズの指先が引き抜かれた。
 名残惜しげに伸ばされた紅く濡れた舌先に、誘われるようにオズは軽く歯を立てると、そのまま唇を重ねていく。

「ふぁっ……んっ……」

 直ぐに深くなるキスにギルバートが意識を奪われている隙に、オズは双丘へと指を滑らせた。
 硬く閉ざされた蕾へと指の腹を軽く押し当て入り口を刺激すれば、ゆるゆると指先を受け入れる。
 未だ物慣れない入り口を傷つけないように、オズは慎重に沈めていった。

「…んっ……っふ……」

 何度身体を重ねようと体内への異物の侵入に、身体が慣れる事はない。
 どうしたって、痛みを思い出して身体が竦んでしまう。
 ビクリと身体を震わせるギルバートを宥めるように、オズは空いている手を力を失っているギルバート自身へと絡めた。直接の刺激に、力の入っていたギルバートの身体から力が抜けていくのを待ってオズは指の本数を増やしていく。
 絡み付く内壁を傷つけないように広げていきながら、オズは慎重に中を探っていった。そうして漸く届いたソノ場所へと僅かに力を込めれば、

「あぁっ…やっ……」

 オズの腕の中でギルバートの身体が大きく震え、刺激で離れたギルバートの口から一際高い声が飛ぶ。

「…此処…だったね……」

 ちゅっと音を立ててポロリと涙が零れた目尻に唇を落とすと、オズは執拗にソコへ刺激を与えていった。

「やっ……やっ…だっ……ソコ……やっ」

 ゾクゾクと背筋から這い上がってくる感覚に、ギルバートは助けを求めるように震える腕をオズへと伸ばす。
 その指先へと唇を寄せれば、ギルバートの背が綺麗に撓った。
 熱に浮かされたような表情で涙を流すギルバートの表情に、オズ自身も限界が近い。
 普段のストイックなまでの表情が壮絶な艶気を放つソレに、オズは柔らかな耳朶へと唇を寄せた。

「…一回、イっておく…?」

 情欲に掠れたオズの声に、ギルバートはゆるゆると首を横に振る。
 既にギルバート自身もトロトロと先走りを零していた。

「…やっ……ひとりは……や…だ…」

 泣きの入ったギルバートの言葉に、一瞬オズは言葉を失うと直ぐに満面の笑みを浮かべる。

「…うん…一緒に、いこう……」

 言うが早いか、オズはギルバートから指を抜き去ると、既に硬く勃ち上がった自身を押し当てた。

「…んっ……」

 触れる熱さに、ギルバートは一瞬身を硬くする。

「…ギルバート…」

 名を呼ばれ、ギルバートはオズの首へと廻した腕に力を入れた。指とは比べ物にならない質量と熱が入り込んでくる感覚に、一瞬息を止めてしまう。
 痛みなのか熱さなのか判らない感覚が消える事はない。
 ずるりと粘膜を擦り上がる熱の感覚にギルバートはオズに廻した腕に力を入れた。
 内臓を押し上げられる感覚に苦痛がないといったら嘘になるが、それでも、自分の中にオズがいると言う感覚に涙が出そうになるほど嬉しいと思ってしまう。

「っは……あっ…あっ……ふぁっ……」
「…んっ……」

 どうしても逃げを打ちそうになってしまうギルバートの細い腰を押し留めながら、オズは苦痛に歪んだギルバートの眉間へとキスの唇を落とした。
 絡み付く粘膜にイきそうになるのを堪えながら、オズはゆっくりとギルバートの内部へと侵入していく。
 痛みに力を失ったギルバートへと指を絡めれば、少しずつギルバートの身体から力が抜けていった。
 そうして、全てを収めたところでオズは動きを止めると、硬く閉じられてしまったギルバートの目蓋へと唇を寄せた。

「…ん…オズ…?」
「…大丈夫…?」

 言って、オズはギルバートの目尻に溜まった雫を唇で吸い上げる。

「…ぜんぶ…?」
「ん……入ったよ……」

 これ以上近くなれないだろうほど近づいている互いの身体に、ギルバートの顔が朱に染まった。
 重なる肢体から互いの心音が届く。
 少しずつ落ち着いてきたギルバートの呼吸に、オズは触れるだけのキスをギルバートの唇に落とすとゆっくりと腰を動かし始めた。











「っあっ……あっ…あぁっ」
「…ギル…」

 奥へ奥へと穿たれる刺激に、ギルバートの腕がオズの首からするりと落ちる。
 名を呼ばれる度に震えるギルバートの肢体にオズは眼を細めた。
 欲しくて欲しくて際限がない。
 繋がりが深くなるほど、こうしてギルバートを離したくないと思わずにはいられなかった。

「…オ…ズ……っ」

 力を失いシーツに波に埋もれているギルバートの手がオズを求めて持ち上がる。
 その指を絡め取るように己の指を絡めてシーツへと押し付け、オズは大きく腰を突き上げた。

「あぁっ……」

 一際高い声と共に、互いの腹の間にギルバートが欲を弾けさせる。

「っ……」

 その刺激に内壁が収縮し、オズもギルバートの最奥へと自身の欲を叩きつけた。

「ひぁっ……んっ……」

 体内に放たれた熱に、ギルバートの身体がビクビクと小さく痙攣する。
 くったりとシーツへ沈み込んだギルバートを労わるように、オズはキスの唇をギルバートの額から頬へと滑らせていった。
 未だ繋がったままの触れ合いに、ギルバートはその表情に微笑を浮かべる。
 まるで幼い頃の彼の笑顔を髣髴させるその笑みに、オズは苦笑を零していた。どれほどの無理をさせても、最終的にこうして自分を許してくれる心優しい従者であるギルバート。だからこそ、こうして身を委ねる事自体その延長ではないかと、考えずにはいられない。
 それでも、
 それでも、オズの中でギルバートを手離すと言う選択肢は存在しないのだ。
 ソレが、例えギルバートがもっとも幸せになれる手段だとしても………。

「…オズ……?」
「…なぁに?…おねだり…?」

 心配げに自分を見詰めるギルバートにオズはニヤリと口角を引き上げれば、瞬間、表情を引き攣らせるギルバートにオズは下腹部に再び熱が篭るのを感じる。
 どれほど己が目の前の存在に囚われているのかと、気づかれないように自嘲の笑みをその口元へ刻むと、オズは再び怯えた表情を隠さず自分を上目遣いで見詰める恋人へと、キスの唇を重ねていった。








 くったりと全身をシーツに沈み込ませている恋人の姿に、やりすぎたかとオズは小さく溜息を吐く。
 あんな風に見詰められてしまえば、止めることなど出来る筈もない。

「……大体、ギルが艶っぽすぎるのがいけない」

 ギルバートが聞けばふざけるなと言わんばかりの暴言を口にし、オズは目を細めながら額に張り付いてしまった髪を指先で梳き上げ、キスの唇を落とした。
 求めれば必ず受け入れてくれる、自分だけの存在。
 何があろうと離せる訳もない。

「ギル、愛してるよ……だから」

 裏切ったら殺すからね、と言う甘い呟きはオズの胸の奥で霧散した。


FIN


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