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小説
Attachment (多分オズギル…ジャックさんどうも)
ご注意!
原作8巻既読・本誌未読状況で
勝手にギルの100年前のマスターがジャックだったと言う
仮定の元、ちょっと色々妄想っております……。









Attachment














「…マスター…?」

 何処か幼子を髣髴とさせられる舌足らずなギルバートの声音に、オズの顔から色が失われる。

「…久し振りだね…?ギルバート……」

 くつりと笑みを零しながらも悪戯っぽい口調でギルバートの頬へとジャックの手が伸ばされた。オズが帰還してから何度となく顔を合わせておいて『久し振り』も何もない。だが、ジャックを知るギルバートがこうしてジャックに会うのは、ある意味100年以上振りと言って良いだろう。

「マスター…」

 震える声が自分を呼ぶのに、ジャックは苦笑を浮かべて自分の指先を濡らすギルバートの涙を拭ってやる。

「相変わらず、泣き虫は変わらないね…」

 言いながら宥めるようにギルバートの額へとキスの唇を落とし、自分と同じくらいに成長したかつての幼子をジャックは抱き寄せた。自分を包み込む変わらぬ温もりに、ギルバートはその胸元へと大人しく顔を埋める。
 ずっと、追い求めていた光に包まれ、ギルバートは二度と離さないと言わんばかりに主人の背へと己の腕を回していた。

「…大丈夫ですカ…?」

 全く自分の存在など元より存在していなかったとばかりに繰り広げられる目の前の光景に、オズは無意識の内に一歩後退してしまう。瞬間、背後に当たった感触に振り向こうとすれば、耳慣れた声音がオズの耳へ届いた。

「…ブレイク…」

 脅かさないでよ、とちょっと拗ねたような声音で言ってみるものの、それはあっさりとスルーされる。

「…大丈夫ですカ…?」

 それどころか、再び同じ言葉を掛けられ、オズは苦笑を浮かべるしかなかった。
 大丈夫な訳が、ある訳がない。
 忠実なる己の従者であり友人であり、また、それ以上の存在と言っても良い相手が、自分以外の男の腕の中にいるのだ。しかも、自分が傍にいる時には見せた事がないほどの無防備さに、オズは無意識の内に唇を噛み締めている事に気づく。
 そして、彼との出会いを思い出す度、何となく気になっていた事が目の前の光景によって漸く像を結ぶ事になり、その事実が、よりオズの心を凍りつかせた。

『マスターをまもるのは、ボクの仕事のはずなのに…!』

 オスカーの後を追う為に駆け出し、そのまま転倒したギルバートの小さな身体に落ちてきた花瓶を己の身体で庇った後、耳に届いた涙に濡れた悲痛な叫びを、オズは思い返す。
 己の名前以外の記憶を持たないギルバートが、口にした言葉のその意味を、幼かった自分は全く気にもならなかったのだが、ここに来て、気づかぬ訳にはいかなくなっていた。

 ギルバートには、以前に『マスター』がいたと言う事実。

 それが、自分の先祖でもあり英雄と謳われるジャック=ベザリウスなど笑い話にもならないと、オズは無意識の内に唇を噛み締めていた歯に力を入れていた。
 鼻につく、鉄の饐えた匂いに、オズは自分の唇が切れた事に気づき、自嘲の笑みをその唇に刻む。
 何があろうと主を裏切らない忠実なる僕。
 だが、その存在はかつての『マスター』あってのものと言う事実に、オズは行き場のない感情を必死になって押さえる。
 本音を言えば、こんな馬鹿げた光景を見続けていたくはない。だが、彼等だけにしておく事など、出来る訳がなかった。
 かつての主従の再会シーンとすれば、これ以上もなく感動的なものだろう。
 多分、嗚咽を堪えているのだろうギルバートの肩が時折震える様を、オズは冷ややかな目で見つめる事になっていた。
 あの時、脅えるギルバートを護ると誓ったのは、自分だ。
 その想いは、どれほどの時が経とうと、オズの中で変わる事はない。
 それに……

「…オズ君……?」

 自分達の存在を忘れたかのように、互いだけに意識を向け合っている二人を無言で眺め続けているオズに、再びブレイクが声を掛ける。

「…アレは、俺のものだよ……」

 彼にしては珍しく自分を伺うようなブレイクに、オズは漸く視線をブレイクへと向けると、にっこりと満面の笑みを浮かべた。
 そう、過去がどうあれ、今の自分達には何も関係はない。
 今、ギルバートを抱き締めている存在は、既に失われたもの、だ。
 魂の欠片と言う、過去の遺物。
 ギルバートが100年前に生きた存在である可能性を知った時から、ある程度覚悟していた事だ。
 彼の過去がどうであれ、今、彼の主人は自分以外には存在しないのだ。

「俺が、ギルバートを手離す訳がないだろう…?」

 再会した時にギルバートに対して宣言した言葉を今度はブレイクに告げ、オズは笑みを深める。
 ギルバートが離れようとしたところで、オズがそれを許す気など、これっぽっちもない。
 自分達が出会ったあの瞬間から、ソレは決まっていた事、だ。

「…そうでした、ネ…」

 ギルバートのオズへの病的なまでの執着も危ういものに感じていたブレイクだったが、満足そうに目を細める主の瞳の奥に存在する執着を見つける羽目になり、ブレイクは心の中で溜息を吐く。
 自分の隣で怒りを抑える主にさっさと気づいて頂きたいものだとぼんやり考えながら、ブレイクは束の間の邂逅を堪能しているかつての主従へと、再び視線を向けていった……――――――――。






FIN



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あきゅろす。
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