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小説
meet again ブレギル(?)(ブレイク+シャロン)
「……良かったんですの…?」

 相変わらず甘く柔らかな主の声音が、密やかにブレイクの耳元へと届く。

「…何のことデス……?」

 一瞬の間の後、訳が判らないと言った表情を浮かべる使用人に、シャロンはその可憐な唇から溜息を吐き出した。元々素直に自分の心情を口にする相手ではないことは重々承知している為、シャロンはそれ以上の詮索を止める。
 こうなることは判っていたことだ。
 大体にして、鴉が鴉である理由の全ては『彼』に起因する。

 オズ=ベザリウス

 彼を助けたいという強い想いが、彼を鴉とした。その彼が戻ってくれば、鴉は彼の許へと戻ることなど想定内のこと。
 判っていて、それでも手を伸ばしたのだから、ブレイクにしてみれば目の前で繰り広げられていることについて特にコメントは必要がないと言ったところだろう。

『…俺は、今でも貴方の従者でいたい…』

 今、この場に鴉の弟君がいなくて良かったとシャロンは心の中で溜息を吐いた。
 本人の自覚がないことが、また罪作りだ。
 特に動揺を見せずに展開を見守る使用人の姿を目端に捕らえながら、シャロンは一瞬、窓へと視線を向ける。
 良い天気だ。
 ティーカップを手に取ると、ゆっくりと口元へと運び、その芳香を楽しむとにっこりと笑みを浮かべる。
 本題は、『彼』の存在の確認だ。
 はっきり言ってしまえば、鴉の件は瑣末事に過ぎない。
 優雅な仕草でカップをソーサーに戻すと、意識を変えるようにシャロンは僅かに目を細めた。











 主の言葉に、実際のところ本当に意味が良く理解できなかったのは事実ではあった。
 オズがアヴィスから戻れば、ギルバートが主の許へと戻ることは判りきっていた事であり、想定内のことに対して、はっきり言って感想など何もない。
 判っていて、手を出したのだ。
 だが、今回の件の本来の目的が知れれば、ギルバートの怒りが目に見えていて、それに関しては面倒臭いとブレイクはぼんやりと思った。
 主と再び出会う為と言う目的の為、己の手を血に染めるようになってから、彼の表情が徐々に憂いを帯びていくことには気づいていた。感情を表に表さないようにする術を見つけたらしい彼ではあったものの、そんなところに幼い頃の彼の姿を見つけたような気がして、ブレイクは昏い喜びを見出すようになっていた。

 徐々に変わっていく己を認められない。

 主には会いたいが、変わった自分を受け入れて貰えるか判らない不安に怯える幼な児の姿は、ブレイクにとっては哀れで愛しいものにしか映らなかった。
 不安の中で闇に怯える子供を手中に収めることなどブレイクには容易い事で、結果、縋るものを失った子供を掠め取る事になったのだが、ブレイクはその事を後悔などしていなかった。
 単に、利害が一致しただけの話だ。
 自分達の関係は、ギルバートにとっては主であり、ブレイクにとっては全ての鍵になるオズがこの世界に戻るまでのこと。
 だが、確かに微かな寂寥感がブレイクの元に残った。

「…お出まし、デスね…」
「えぇ」

 予想通りと言えば予想通りの展開に、ブレイクは口角を引き上げる。
 そうして、彼らの信頼関係を目の当たりにすることになり、ブレイクは薄い笑みを浮かべた。

 さて、賽は振られた。
 どう転がるかは、神のみぞ知る……―――――。



FIN



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