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chu
詮索好きは猫をも殺す


時々、残酷なほどに、からかいたくなる




「嫌い?」

「そうや」

「…どこがじゃ?」

「全てがよ、あたし一希ちゃんの全てが嫌いなの」

「……」

「あら、傷ついちゃった?」

「……」

しとしと、冷たい霧雨が先ほどから降り注いでいた。
…泣くやろうか


「じゃあ、今まで、何であんなことしてきたんじゃ」

「キス?それとも夜の営み?」


ぴくりと、海音寺の肩が揺れた。
そのまま、視線を俺に絡めてくる。
強い意思、折れることのない心をうつす瞳が揺らぐ。
あぁ、海音寺、俺はお前のそういう目を見るのが好きなんや。



「……どちらもじゃ」

「…暇つぶし?」

えっと小さい声をあげて海音寺は眉を下げた。
瞳の中が更に揺らいだ。それでも、また視線を合わせて目で問いかけてきた。
唇をぐっと強く噛みしめている。


「瑞垣は、嫌いなんか、俺のこと、」

「あ、知らんかった?」


今にもはちきれんばかりに、海音寺は瞳を緩ませた。もうそろそろ、からかうのを止めておこうか
途端にシリアスな面もちから、いつもの皮肉的な笑いへと切り替えて、ニヤリと笑う。


「なーんてね!やだ、一希ちゃんったら、本気にしないでよー!」

「えっ」

目をまん丸に見開いて、こぼれそうなほどに溜まっていた涙が一つこぼれ落ちた。

「やーん!泣くほど悲しかった?」

「っ!あほ!そ、そんなわけないじゃろう!」

「ふふ、ごめんごめん、許してぇな」


海音寺の両頬を挟み込み、唇を尖らせるようにしてみる。
眉がへの字からつり上がる。
それを見て、瑞垣はけらけらと笑った。


「態度と言ってることがあってないんじゃが…うむっ」

ぐっと力を入れられ、言葉が途中で切れる。
にやにやと挟まれた頬から力を抜きながら、瑞垣は笑う。


「一希ちゃん可愛いー!」

「瑞垣、俺のこと、本当に…うっ」

また、話の途中で遮られる。面白い顔ーなんて言いながら瑞垣は頬をむにむにと揉む。
そのまま横に引っ張ったり、ぐるりと円を描いたりして遊ばれる。ふと、手を離して、頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「柔らかいなぁ、一希ちゃん餅でも食べた?」

「食べてないに決まってるじゃろ!」

ぷくっと頬を膨らませ、少し朱がさした顔を、海音寺は自身の両手で挟み込んだ。

「そんなに、柔らかくないじゃろっ」

「えー?」


海音寺の手を、頬からどけ、片方の手で両手首を掴むように封じる。
嫌そうな視線を向けられたが、気にしない。

「柔らかくて美味しそうで食べちゃいたいぐらいや」


もう片方の手で海音寺の頭を固定し、引き寄せる。そのまま瑞垣は海音寺の頬をペロリと舐めた。

「っ、瑞垣!」

「あ、餅は餅でも焼き餅やん、真っ赤に美味しそうに焼けてるわぁ」

「…っ!」

もう一度唇を寄せ、今度はぱくりとはんだ。
舌で頬を押すようにすると、真っ赤な顔をして俺のもとから、逃げ出た。声にならない声を発しながら、どんと俺の胸板を叩いてきた。
…あぁ、何故か、退けられたみたいや。
苛々、腹の中の何かがうごめく。

傷つけてみたく、なる。


「っ!瑞垣、本当に、嫌いじゃ…」

「嫌いていうたらどうするんや?」

遮るように言葉を発し、瑞垣はすっと目を細めた。

海音寺の真っ赤だった顔が一気に冷めたように、青くなる。
くるりと一度、視線が空をさ迷った。何で、そんなことを言うんじゃ。


「なぁ、嫌いていうたらどうするんや?」

「瑞垣、俺、は」

「嫌いていうたらどうするんやって」

「っだから……」

「俺はな、お前が嫌いや」

ダメや、それ以上は言うたらあかん。
海音寺が息を呑むのが分かった。瑞垣は海音寺から視線を外し、どこか遠くを見るように、それっきり黙ってしまった。









「俺は、好きじゃ」

絞り出すようなか細い声で海音寺が開口した。

「…俺は嫌いやけどな」
心臓に鋭利な何かが深く刺さり込んだ感じがする。痛い、冷たい何かで満たされていく。



「俺、お前のことが分からん、どれが本当のっお前なんじゃっ、なん、でっ…優しくしたり、突き放したりっ…もう俺嫌じゃっぁ…」

ぼろぼろと涙が零れ落ちる。レモン色、甘酸っぱいというよりも、酸味だけの酸っぱいレモンを連想させた。


海音寺はその場に背をむけて走り去った。
その背中に向かって瑞垣は手を伸ばした。空を掻く。

その手で空に文字を書いた。
I love you
歪んだあいの字に思わず苦笑した。











詮索好きは猫をも殺す
(何で涙が溢れるんやろ)(あー寂しくて死んじまいそう!)





//6000hitキリリク
歩実さんへ 喧嘩瑞海
遅くなった上にぐだくだ文で申し訳ないですorz

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