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失格者
07

やめろ!
そんなもので殴られたら……!
やめろ!やめろ!やめろ!
や……やめてくれ……!

首をぶんぶんと振りながら、必死で叫んだ。

暴れ過ぎた為に縄が手首に食い込み、既に皮膚が剥け血が出ていた。
もう何が何だか分からないほど僕はもがいた。



ごき、



しかしそんな僕の願いも虚しく、男は笹山の小柄な体躯にその非情な鉄を振りおろした。


ごきり、


嫌な音が辺りに響き渡った。


ガツ、ゴッ、


骨が折れる音が。
骨が砕ける音が。
肉が裂ける音が。


骨が、皮膚が、肉が、悲鳴をあげている。


男が鉄パイプで暴行を加える度に、笹山の体が条件反射のようにびくりと逸れる。

こんな。
こんなものはきっと現実では無い。

きっと、これは悪い夢なのだ。
今は夜中か明け方で、僕ははっと目が覚める。
ぐっしょりと汗をかいていて、そのせいで寝巻きが湿っていて。
何だか悪い夢を見たような気がするけれど、その内容はきっと忘れていて。

朝には眩しいくらいの太陽が僕を包み込んで。
その暖かさに文句を言いながら詰襟のホックをきちんと留めて。

そして、待ち合わせの場所にはいつも通りの親友の姿が。
少し背が低い事を気にしていて、いつでも元気一杯な笹山の笑顔が――――――。





グシャ、







何かが潰れた音がした。







「っう……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

「…………死んだな」

酷く冷静なトウジの声が、僕の心に最後の痛みを与えた。



何故。
何故。
何故。
何故。
何故。



何故こんなこんなこんなこんなこんな!
笹山が!僕が!
何故!
何をしたというのだ!
何故こんな仕打ちを!



もう何の反応も示さないことに気がついたのか、暴行を加えていた男達がすっと離れていった。

しかし、カメラが最後まで執拗に笹山を映す。
様々な角度から、もう動くことの無いその体を無慈悲にもカメラに収めていく。


もう、やめてくれ。
それ以上、もう……。
笹山を、死んだ者を侮辱をしないでくれ。


お願いだから……。




カメラを携えた男達も去り、スポットライトが取り残された笹山を照らしだす。
そのあまりにも酷い有様に、僕は視界が滲むのを抑えられなかった。


腕も足も折れているだろう。
体中に青痣が広がり、もはやそれは黒い紫に変色している。

頬も殴られて晴れ上がり、口と額からは血が出ている。
こちらからは見えないが、頭骸骨が陥没か何かしているのかもしれない。
瞳は半分開かれているが、しかしもうその球体は何も映しだすことはないのだろう。




僕の声すら出ない悲しすぎる慟哭は、笹山に届いたのだろうか……。









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