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失格者
03

カッという音がして、不意に布越しに眩しさを感じる。
目の前が真っ白く染まる。
突然目隠しを外されそのあまりの明るさに目を数回瞬かせると、目の前に演劇で使うようなライトが輝いていた。
スポットライトというのだろうか、それをもっと簡素化したような明かりが床のある一点を煌々と照らしていた。

ここはどこだ……?

首をぐるりと回して見た所、どうやら大きな倉庫のようだ。
鉄パイプや、大きな機材のようなものが所々に置かれている。
ここが彼らのねぐらなのだろうか。

はっとして、気がついた。

先ほどまで声が聞こえていた笹山が、居ない。
そんな。
姿は見えなかったが、先ほどまで確かに声がしていたのに……。
そういえば男達の声も幾分減った気がする。
どこへ行ったのだろうか。
僕は慌てて笹山の姿を捜した。

「笹山っ!」
「うるせえ、声をだすな!てめえはまだだ!」

僕の目隠しを外した男がまだすぐ傍におり、大きな声で怒鳴られた。

てめえはまだだ……?この男は確かに今そう言った。
といことは、笹山が僕の前に何かされるのか?
行き着いた考えにびくりとして思わず目を見張ると、その男の後ろから見覚えのある青年が歩いて来た。


簡素なツナギ姿に、左手には煙草。
短めの漆黒の髪と瞳。
衣服こそ違えど、僕が昼休みに学校で出会ったあの男であった。


「よお、また会ったな」
「……あんた、」

そんな僕と青年を見て、声を上げた。

「なんだあ?トウジ、お前こいつと知り合いか!」
「あー、まあね。今日会った」
「ってことはコイツか?お前が言ってた東の上玉ってのは」

東。
それは僕の通う高校のことだ。
正式名称はもっと長いのだが、略して東や東高と呼ばれる。
やはりこのトウジと呼ばれた青年は、あの時東高にいたのだ。

「そう。可愛いだろ。女の子みたいな綺麗な顔。……早く汚したい」
「お前も悪趣味だな……。まあこいつは後回しだ。今日はあいつだ」

男は僕を拘束していた縄を緩めた。
そしてそのまま僕を引き摺り、大きな鉄の機材に再び縄で縛りつけた。
両手を一纏めに括られ、大人しくしていろ、と言われた。
大人しくなんかしていられるか、そう思ったがぐっと堪え、静かに頷いた。
それを見た男はフンと鼻を鳴らし他の男の元へと去っていた。


トウジと呼ばれた先ほどの青年の登場には驚きを隠せなかったが、今はそれどころではない。
笹山は一体どこにいるのだ。
ごちゃごちゃと物が乱雑に積まれている倉庫内に目を必死で走らせるが、彼の姿は見つからない。
どこかへ連れていかれてしまったのだろうか。
引き離されるなんて最悪のパターンだ。

目を皿のようにして探していると、男に引き摺られるように歩いている笹山に気が付いた。
学ラン姿の笹山が、覚束ない足取りで歩かされている。

笹山を連れている男が一人。
何か相談をしている男が二人。
隅の方で機械のようなものをいじっている男が一人。
全員で男は四人。
いや、トウジも彼らの仲間なのだろうから、五人か。
この状況からどうやって笹山を連れて逃げるか……。
僕は必死に考えを巡らせた。
自分一人だったならば僕はとっくに諦めていただろう。
しかし、ここには笹山もいる。
一人ではない、その事が僕に勇気を少なからず与えてくれている。

僕より小柄な笹山は、今三十路前後の男に連れられている。
何とか引き離して……いや、その前に僕もこの縄を解かなくてななるまい。

辺りになにか鋭利なものが落ちていないかと探すが、見つからない。
夜ということもあり、ライトアップされている場所以外はほとんど薄暗いのだ。

「くそっ……」


すると視界の端で、ライトアップされた床の上に、笹山が突き飛ばされた。
慌てて目を向けると、どうやら痛がっているらしい。
手の拘束は僕同様まだ外されていない。


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