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失格者
14




撮影日。


撮影場所はアパートだという。
老朽化により誰も住まなくなったそこを、今回の撮影場所にするらしい。

僕はいつものように学ランに袖を通し、トウジを待っていた。
彼が僕を、撮影する場所まで案内する役目なのだ。

彼と二人きりでいられる最後の時かもしれない。
それが過ぎ去ってしまえば、僕は笹山と同じ目に、いや、笹山以上の目に遭うのだろう。

早くトウジに会いたい。
けれど離れたくはない。
僕は膝を抱えて部屋の隅でじっと彼が来るのを待った。

何度も僕は自分の死を想像し、反芻した。
あんな風に鉄パイプで殴り殺されるのだろうか。
いや、刃物か何かで切り刻まれでもしてしまうのだろうか。
本当に残酷なスナッフビデオだと、切断した部位を被害者に食べさせたりもするそうだ。
それをトウジから聞いた瞬間、あまりの鬼畜振りに吐きそうになった。
一つ一つ自分と想像した。
そうやって死についてひたすら考えた。
しかし、やはり何一つピンとこなかった。

そこで、ふと思った。
……遅くはないか?
一体どうしたのだろう。

夕方にこちらへ来る、と今朝言っていたのだ。
それなのに、もう帳は降りて辺りには暗闇が広がっている時間だ。

何かあったのだろうか。
それとも、トウジが撮影日を間違えていただけなのだろうか。
どちらにせよ、何の連絡手段もここには無いのでとにかくじっとしているしかない。
僕は明かりも付けずに闇の中、ひたすら身を顰めていた。





それから何時間経ったのだろうか。
辺りがザワザワと騒がしくなり、僕ははっと耳を澄ませた。
どうやら少し眠っていたようだ。

誰かの話し声のようなモノや、足音がバタバタと聞こえる。

トウジがあの男達を連れて帰ってきたのだろうか?

どちらにせよ、トウジ以外の人と会うのは随分と久しぶりになる。
僕は訳の分からぬ緊張に、身を固くした。

ばたばた。

この部屋の傍で誰かの走る音がする。

ガタン、と何かを倒すような大きな音。

トウジなのか?
いや、トウジならばもっとひっそりと入ってくるだろう。

では、誰なのか?

耳を澄ませていると、この部屋の鍵がガチャガチャと鳴り始めた。
やはり、トウジではない。

ガチャンと音がして、扉が開いた。



カッとライトが照らされて、僕は眩しさのあまり目を瞑った。

「いたぞ!生存者だ!!」
「年の頃は15、6の少年!」
「急げ、車を回せ!」

矢継ぎ早に耳に飛び込んでくる何人もの声に、僕は混乱した。
なんだ、これは。
この人達は一体……。

呆然としている僕に、男性が近付いてきた。

「大丈夫か!どこか痛む所は!?」
「あ……え、」
「もう大丈夫だぞ」

そう言って、その男性は僕の手を取りゆっくりと立たせると、にっこりと笑った。

「もう安心しなさい。我々が来たからには君の安全は保障する」
「あ……なた、は、」
「警察だよ」

僕は訳も分からぬまま、彼と暮らした部屋から連れ出されそのまま車に乗せられた。
車での移動中、その男性が何かを色々と聞いて来たが、僕は何も答えられずにただぼんやりとしていた。



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あきゅろす。
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