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失格者
12
「んくっ……」

違う動きを見せる二本の指に穴の中を掻きまわされ、目の前が酸欠のようにくらくらした。
たかが指二本。
しかも慣らしてくれたにも関わらずこんなにも苦しいのだ。
一体笹山に与えられたあの苦痛はどれほどのものだったのだ。
想像することも出来ないあの絶望は、同じ状況に立たされて初めて理解できるのだろう。

指がずる、と抜かれた。
先ほどまで指が入れられていた部分に空洞が出来てしまったような、妙な感じがする。
入口がぱくぱくと収縮しているが、自分の力ではうまく抑える事が出来ない。
恥ずかしい。

背後からジイイとチャックを下ろす音がする。
むわりと濃密な気配があたりに漂う。

「悠…………愛している」

そんな。
このタイミングでそんな言葉を放つなんて。

先端がアナルへと宛がわれ、ずぶずぶと侵入してくる。
指とは違った、強すぎる圧迫感に息が出来なくなる。

「ひっぃあ、あああっい、」
「……っく、」

熱い塊が僕の胎内でびくびくと脈打っている。
どのくらい時間が経ったのだろう。
ほんの一瞬だったのかもしれない。
尻に彼の陰毛がぐり、と押し付けられる。
どうやら全て入ったようだ。

「っは、ぁあひい、ぃぃんっ」
「っ……は、悠、悠っ……」

繰り返される僕の名前に、先ほど彼が囁いたあの言葉が蘇る。

愛している。

何故、トウジはそんな事を言うのだ。
君がこれから殺そうとしている人間に向かって、そんな。
そんな言葉を。

首を巡らせると、身を乗り出した彼と目が合った。
そのまま重なるように覆い被さってくる。

ちゅ、と触れるだけのキスを背中に何度も落とされる。

やめてくれ。
そんな、そんな愛しげに。

そんな風に触られると勘違いしてしまう。
トウジは本当に僕の事を愛しているのでは、と。

そんな風に熱い瞳で見つめられると、誤解してしまう。
僕は本当にトウジに愛されているのでは、と。


結合部がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立て、痛みが次第に快感へとすり替わる。
もうどこからがトウジでどこまでが僕なのか分からない。
快感によってぐずぐずと溶けていく脳は、こんな異質な状況下ですら幸福感を僕に与えていく。

親友を殺され。

僕も死に向かい。

それなのにトウジと繋がっている今、満たされていると感じる僕はおかしいのだろうか。

「あっはぁぁ、ん、ぁあ、っふ」
「悠、悠……悠、」
「んと、うじぃ……トウ、ジ……んっ」

トウジの腰の動きが一層早くなり、思いきり揺さぶられる。
あまりの激しい突きに、僕は射精してしまった。

きゅうとアナルが締まり、トウジのペニスを締め付けているのが伝わる。
限界だ。
そう思った時、トウジが僕の中に思い切り精を吐きだした。

びしゃあ、と熱いものがかけられ僕は体を震わせた。
女の子では無いので妊娠する心配は無いが、それでもドキリとする。

はあはあと息を乱す僕に、トウジはキスを何度も落とし

「悠、愛している。悠……」

と囁く。
そしてそれを聞く度に、僕の胸にじわりと暖かいものが広がる。

僕は気がついてしまった。

この不可思議な感情の正体を。

こんな想い、知りたくなかった。

知らずにいれば、もっと楽に生きられたのに。

もっと……もっと楽に死ねるのだろうに。

気がついてしまった。
この甘い痛みを伴う気持ちが、恋なのだと。

「悠……可愛い、愛しているよ」

彼の優しい掌が、僕の頬を滑る。
愛しい、彼の瞳がそう語っている。

トウジ、僕もだよ。
今ようやく気がついた。
愛しているよ。

「……僕も、」


トウジの驚いた顔が目に入り、そのまま僕は意識を手放してしまった。






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あきゅろす。
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