02
あれからぎゅーっと抱き返されて、破れたシャツを険しい顔で見た先輩が自分の上着を無言で俺の肩にかけ、俺の手を引いて暗い倉庫から出た。
空は夜を感じさせる暗闇が広がっていて、頭の片隅で姉ちゃんに叱られそうだな、と一人思った。
車が置いてあるという場所に歩きながら先輩に事情を簡単に聞いた。
あの男たちは先輩たちが始末仕切れなかった残党で、先輩たちに仕返しと俺や仲の良いミケたちをさらったらしい。
俺たちの幼なじみの友達が俺が連れ去られていくのを見て、先輩たちに言い、分かったらしく、俺と同じくミケたちも他の先輩たちが助けてくれたみたいだ。
少し歩くと闇に溶けていて見にくいが、黒塗りのベンツが止まっていた。
その中から見知った声が漏れていて、思わず立ち眩み。近づくにつれて、その声はだんだん大きくなっていった。
「感謝しなさいよね!まったく」
「はあ!?椿たちが最初から来てりゃこんな事にはならなかったんじゃねぇのかよ!」
「えぇっ!か弱い私たちにあんな男たち相手になんてぇ…む☆り」
「星付けんなぁああ」
声の主は椿にミケに小町…かすかにナオや美桜先輩たちの笑い声が響いていた。
俺が開けるのを躊躇していると、後ろにいた天馬先輩が車を開けた。瞬間、中にいるみんながいっせいにこちらを向いたので少し身じろいだ。
「アキ!無事だったんだな!良かったぁ…って良くない!シャツ破けてるし、殴られてるじゃんか!!」
「まあちょっと、ね。ていうかミケの方がやばいじゃん」
車に乗りながらそうミケに言う。そう、ミケは顔の一部が青くなってたり口が切れていて血が出たりしているのだ。
ナオとトモは怪我がないらしい、リョウは顔が気分悪そうに青いが外傷はないようで一安心。
それでまあなんだ。車の中で天馬先輩に抱きしめられているのは置いといて…ぶっちゃけ俺の傷はいうほど痛くないから大丈夫なんだけど。問題がまだある。
「で、なんで椿たちがいるわけ」
ふん、と偉そうに座るのが椿の小さな頃からの癖だ。直す気はないらしく、むしろヤクザの娘として役立っているらしい。
「ご、ごめんなさいぃ」
「ごめ、俺…」
不良が多いこの車の中で見事に小さくなっていた椿と小町の実の弟、翼と大地が今にも泣きそうな顔で謝ってきた。二人に少しびっくりしたが、出来るだけ優しい口調で言った。
「二人は悪くないんだよ、悪いのはあの気持ち悪いやつらだから。むしろ感謝してるよ」
「兄ちゃん…」
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