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王子様登場!


気持ち悪くて吐き気がする。俺に触れるな。


「あ、ぐぅ…いっ」


必死に抵抗していたら、もはやリンチ状態だった。それでも犯されるよりかは幾分かましだ。


「ははは、まあこんなもんだろ。さっさとヤろうぜぇ」

気持ち悪い下品な笑みを浮かべながら顔を近付けてきた男に、赤い唾を吐けば腹を蹴られる。

冷たいコンクリートに向き合うように組み敷かれる。ああ、いやだ。


「まったくよぉ、てこずらせやがって」

上に乗った男が笑い出すと周りの男たちも笑い出した。



男の手が、伸びてくる。







ガッシャアアン!!

けたたましい音と月の光が辺りを包み込んだ。



「あ、あ、せんぱ」

入り口をぶち壊し、その上に立っていたのは待ち望んだ俺が好きな人で。
ゆっくりこちらに向かって歩いてくる。俺でも感じられる威圧感を出しながら。

俺の近くまで来て、ピタリと止まった。誰も動かない、否、動けない。



瞬間、ビュッと空気が斬られる音がし、俺の上から重みが退いた。先輩が、殴ったんだ。




それから一分もしないうちに周りの男をすべて気絶させる先輩はやはり常人ではないと思い知らされた。

でも、広く暖かい胸に抱かれた時は心底安心して涙が出た。今になって溢れ出した俺の大粒の涙を先輩は辛そうな表情をしながら親指で拭う。


「秋人、すまない」

「天馬、先輩…!!」


ひどく悲しそうな顔をするものだから。俺は先輩にそんな顔をして欲しくなくて、笑っていて欲しかった。




「ね、先輩。一緒に帰りましょう」

震えている先輩。
泣いているのだろうか。
そう思うとひどく先輩が愛おしく感じて、涙も引っ込んでしまった。


小さい子をあやすように先輩の背中に手を回し、大きなそれをゆっくりとなでた。


「ありがとうございます、天馬先輩」


大好きですと小さく呟いて、自分より大きな体をぎゅうっと抱きしめた。




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