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学校にて

 
「昼休み迎えにくる」

そう言って先輩は俺の頭を一撫でしてから、きびすを返した。
多分だけれど、屋上へ向かうんだろうなぁ。

先輩を少しだけ見送って教室へ入ると。

さっきまでのをみんな見ていたのだろう、みんなの目が見開いて口も顎が外れんばかり開いていた。正直怖いです。


唐突に聞こえた言葉。
なんで、お前みたいな平凡が。

嫉妬や驚きや好奇心。
そんな、みんなの目がそう言っていた。





「はよーっす、アキっ!どうした?元気ねえじゃんか…」

「あ、ミケ…おはよ…」

みんなが無言の中、唯一、話しかけてきたのは幼なじみで親友である三谷啓吾だった。"みたに"と"けいご"の頭文字から「ミケ」と呼んでいる。

明るめに染めた茶髪で襟足だけが少し長く、髪はワックスでふんわり立たせている。
美形でも平凡でもない、上の下的な男だけれど、とても優しいんだ。




教室での席で俺たちは前後になっている。
ちなみに、俺が後ろだ。

「で、あの人とはどういう関係?」

ミケなりの配慮なのかこそりと聞いてきた。


言いづらいということはない。

だけれども、相手が相手だ。少々渋った。





「言いたくなけりゃ、無理には聞かねえよ…。
だけどさ、心配なんだよ…相手が相手だし」

もっともな意見だ。

ミケは優しいから無理には聞かないだろうと思っていた。


でも――…






「あんさ…俺、先輩と付き合うことになったんだ…強制だけど…」


別に軽蔑されるとは思わない。
この学校では珍しいことではないし、第一、俺たちの幼なじみ二人が世に言う腐女子と言うやつだからである。




「まっじで!?」

やはり男同士と言うより、先輩と俺が、に食いついた。

観察するようにまじまじと俺を見つめ、ほえーとだらしない声を出した。



「まあいいんじゃね?嫌いなやつに告白して、迎えにくるほど暇なやつじゃないだろーし…」

「それに、鬼塚天馬は自分のバイクの後ろを誰にも乗せたことないって噂だしな」


ミケの言葉に繋げるように言ったのは少し長い黒い髪をうしろに小さく結んだ長身の男だった。



「ナオ……な、なんで知ってんの?」

ナオ、狭間直樹は高校からの友だちである。
美形でも平凡でもない、上の下的な男だ。

唯一は、背がとても高いということだ。
羨ましいことに。



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