聖なる夜の前日に
『はぁーぁ…』
今日は12月23日、聖夜の前日。
普通はみんなウキウキで明日の準備をしているであろう日に、何度目か分からないため息をつく。
…そりゃつきたくもなる。
今日はプレゼントでも買いに行こうかなー、なんて思ってたのにテストが赤点だったせいで補習だし。
明日のイブはともだちとクリスマスパーティーしよ!なんて言ってたのに、今日になって彼氏とデートだから無理になったのごめんね、なんてメールが来るし。
ウキウキフワフワしてられるかっての!
『はぁー…』
「どうしたんだよぃ、そんなため息ばっかついて」
隣で一緒に補習プリントをしていた丸井が、話しかけてきた。
多分プリントが終わったのか、飽きたのだろう。(帰る様子がないのを見ると後者だろうけど)
私と違って丸井はこんな日に補修だっていうのに、いつもと変わらず元気でいいな。その元気ちょっと分けて欲しい。
「幸せ逃げるぜ?」
『いーの、私に幸せなんかもう残ってないもん。今日は補習だし、明日はともだちにドタキャンされるしさー。せっかくケーキまで作ったのにさ!』
「うわ、不幸続きじゃん」
『でしょー』
はぁ…、何で私丸井に愚痴ってんだろ。
なんか思い出したらもっと落ち込んできた。
なんで私ばっかりこんな目に合わなきゃなんだよお。
せっかくのクリスマスイブ前日なんだから良いこと1つぐらいあったっていいじゃん、神様の馬鹿。
「じゃあ、俺がそのケーキ食ってやるよぃ」
『…は?』
「ケーキ焼いたけど一緒にパーティーする人いねぇんだろぃ?」
『…いや、そうだけど、それはどういう意味でしょうか』
「〜っだから明日一緒にクリスマスイブ過ごさねぇかって誘ってんだよ!」
『え、えぇ!?冗談!』
「冗談じゃねーよバーカ!お前のことが好きだから誘ってやってんだから喜べよい!」
「っえぇえ!?」
上から目線な丸井からの急な告白に私は呆然とした。
丸井は俯いていたけど、真っ赤な髪からのぞく耳はそれと同じように赤に染まっていた。
「…明日、11時に駅前な」
『へ』
丸井は私の返事も聞かず、それだけ言って教室から出て行ってしまった。
聖なる夜の前日に
(…今のは不意打ちでしょ、ずるい)
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