Do you know?
『………嘘お。』
いつもは綺麗なオレンジ色に染まってるはずなのに、今日は灰色に塗られた空を見上げる。
見上げた空からはざあざあとどしゃ降りの雨がやむ気配もなく降っていて、天気予報を信じて傘を持ってこなかった私はその場に立ちすくんだ。
雨が小降りになるまで、この寒い玄関出口で雨宿りするしかない。
『日直で遅くなっちゃったから、友達みんなもう帰っちゃってるし。…困ったな』
「だな〜…」
『え!?』
思いがけない相槌に驚いて、振り向くとそこには…ま、丸井君…!!
『えっ!?丸井君なんでここに、』
「部活のミーティングで遅くなった。」
『そっそうなんだ…大変だねっ』
「おー」
『………』
「………」
…会話終了。
あは、そうだよね。あんま喋ったことないもんね…そりゃ喋りにくいか。
ちらっと横を見れば丸井君は、まだ雨が上がりそうにない空を見上げながらガムを膨らませている。
かっこいいなあ、なんて思いながらしばらく見とれていると、視線を感じたのか丸井君が私の方を向いたので、思わず目をそらしてしまった。
『(…気まずい。…何か、何か話題…!』
『ね、ねえ、丸井君知ってる?』
「お?」
『ともだち、昨日から仁王君と付き合いだしたんだよ!』
「…知ってるぜぃ」
『で、ですよねー』
…って私何言ってんの!
丸井君と仁王君は仲良いんだからそれぐらい知ってるに決まってるでしょ!
私の馬鹿!
あああ、やってしまったと心の中で頭を抱えていると、丸井君が口を開いた。
「なあ、知ってた?」
『へ?』
今度は空を見上げているわけでもガムを膨らませているわけでもなくて、真っ直ぐに私の事を見ている。
少し色素の薄い紫色の丸井君の瞳に吸い込まれるようで、ドキドキして目を離せないでいると、丸井君が再び口を開いた。
「俺、お前の事好きなんだぜぃ」
…え?
丸井君の言った言葉に、私はしばらく意味が理解できないで呆然とする。
そして顔の温度が一気にあがっていくのが分かると同時に、言葉の意味も分かった。
丸井君はそんな私を知ってか知らずか、普通に鞄から折りたたみ傘を取り出し、私に差し出した。
「で、返事は?」
そういう丸井君は今まで見てきた中で一番かっこよく見えて、私の頬をさらに蒸気させた。
―もちろん、返事は決まってる。
『私も、好き…です』
そして私は差し出された折りたたみ傘を受け取った。
Do you know?
(本当はミーティングなんてねえんだ)
(お前を、待ってたんだぜぃ?)
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